石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『猫だましっ』(きむる、一迅社)感想

猫だましっ (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

猫だましっ (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

ホロリとさせられるわちゃんと百合してるわでもう大変

猫のようで猫でない生き物「ノアール」と「ブラン」が、人間界での契約を果たそうとして奮闘する物語。単なる萌え4コマかと思いきや、じんわり泣かされるわ百合部分も熱い(それでいて上品)わで、とても面白かったです。まったり読めて、それでいてぐっとくるキュートな百合4コマをお探しの方におすすめ。

油断してると目から変な汁が

ノアールとブランの、「この世界での契約を成就させたら皆の記憶を消して異世界に帰らなければならない」という設定自体は特に新しいものではないと思うんですよ。ところがこの作品では、

  • ノアールたちの正体を敢えて詳しく説明しない
  • ヌイグルミ(に見える着ぐるみ)という小道具を出す

というテクニックを使うことで、そこにまったく新たな切り口を作り出すことに成功しています。
読んでいるうちに自分の子供の頃のことを思い出し、ホロリとしてしまう人も少なくないのでは。あの大切なヌイグルミは、ひょっとしたら昔、「友達」だったのかもしれない。ノアールやブランのように。この一点において、この物語はダイナミックに現実とつながり、読者の胸にぐんぐん迫ってきます。単なる萌え4コマだと思って油断していると、目から変な汁が出て大変なことになりますよ。

百合部分も熱いです

百合メインのお話というわけではないのですが、なかなかどうして熱いんですよこれがまた。このお話には、主人公の少女「ルウ」(5歳)をひそかに好いているツン少女の「舞」(5歳)というキャラクタがいます。初めのうちはよくある「仲良くしたいのにつっかかってしまう」というエピソードが微笑ましく描かれていき、やがて念願かなってルウと仲直りするというほのぼの&あったかシークエンスが登場。これだけでもちびっこ同士の微百合ものとしてじゅうぶん面白いのに、そこで終わらないところが最大のポイントです。というのは、この後、非常に上品なやり方で、舞の思いが実は友情以上の「好き」感情であることが示されていき、つまりは微百合どころかガチ百合なお話であったとわかるようになっているからです。そこで妙な偏見が登場しないところも、とてもよかった。さっぱりしているのに実は熱い、ユニークな百合描写だと思います。

まとめ

一見ありがちな萌え4コマのように見えて、実はじわりと泣かされるわ百合部分も深いわで、非常に面白い作品でした。メインテーマではないとは言え、女のコから女のコへの恋の描写がぜんぜんあざとくなく、本気の恋情がさらりと描かれているところがとてもよかったです。おすすめ。