石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『すもも★あんみつ(2)』(神堂あらし、一迅社)感想

すもも★あんみつ 2巻 (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

すもも★あんみつ 2巻 (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

百合ネタもギャグもパワーアップした最終巻

鬼族の姫「李(すもも)」の、人間界での生活を描くドタバタ4コマ。この2巻で完結なのですが、1巻と変わらぬ面白さでした。強烈な百合キャラ「木蘭」の登場頻度が上がっている上に、百合以外のギャグもまんべんなくパワーアップしています。百合ものにありがちなドリーミーな女子校幻想を笑い飛ばしているところもよかったし、女同士だけじゃなく男女カプや兄妹カプも出てくるあたりもナイス。

2巻での木蘭について

木欄は1巻と同じく「百合妄想専門で、しかもそれを口に出す岡本夢路」的な路線を着々と歩んでいます。愛する撫子(なでしこ)にだけは思わず襲いかかって殴られるこのキャラが、今回は完全にレギュラー入りしているのが嬉しいところ。相変わらずのめげないエロ脳っぷりと、一本背骨の通ったオンナノコスキーっぷりが素晴らしかったです。

撫子が嫌がっているのならその時点で木蘭はセクハラ加害者なのでは、という見方もあるかもしれませんが、今回はその点に対するフォローもさりげなく入ってるんですよ。具体的にはたとえばp.98の「今日のところは」なんですが、読んでいてにやりとさせられました。こういう形の愛もあるよねえ。p18「さびしんぼ」とかも、よかった。

ドリーミーな女子校幻想を粉砕

相変わらず女子校でモテモテの撫子が、鶯&木蘭の

鶯「ほっぺにチューぐらいどうってことないでしょうに」
木蘭「女子校なんだからぁ」

という言葉に「偏見」と切り返し、

撫子「女子校と言やぁこんな世界が広がってると思ったら おおまちがいですわよ!!」

と叫ぶシークエンス(p. 46)がおかしくておかしくて。ちなみに「こんな世界」の部分には、背景として萌え百合漫画でありがちなシチュエーションが4種ほどキラキラと描かれてるんですよ。こういうのってほんとに偏見だったりしますし、百合ギャグ漫画でありつつそうした偏見をしっかり笑い飛ばしてみせるところがたいへん新鮮で、痛快でした。

他にもさまざまなカプが登場

いったいどうやってくっつけるのかという感じだった「李(すもも)」と「龍」の男女カプもある意味進展していますし、初登場の「藍花(あいか)」から兄の「紺」への近親愛も出てきたりしています。もちろん「浅葱」は相変わらず族長ひとすじ。そんなわけで、百合だけに終始しないという世界の広さと深さが心地よかったです。

ギャグもパワーアップ

もともとキャラが立ちまくった漫画なので何やったって面白いんですが、今回特にウケたのは、

「ひとつ屋根の下で 4.5人暮らしか…」

「そこは『女子校生』表記にすれば大丈夫!!」

「行くぞ」
「それ キャッチできない」

あたり(上からそれぞれp. 14、p. 92、p. 118)でしょうか。どれも「いかにもこの人なら言いそう/やりそう」と思わされてしまうような状況で、きわめて楽しかったです。

萌え漫画というと「メイド」とか「メガネ」とかの属性設定だけで終わってしまい、キャラが薄っぺらい記号としてしか機能していないものも散見されますが、『すもも★あんみつ』はその逆を行く作品ですね。メイドならメイドに、メガネならメガネに、この漫画でしか読めない強烈な個性が付与してあって、だからこそギャグの破壊力もいっそう増しているのだと思います。

まとめ

ギャグも良し、百合も良しで大満足の最終巻でした。ステレオタイプを逸脱した面白さが最大の魅力です。百合ギャグのみが目当てな人でも、十分いける内容なのでは。というわけで、おすすめ。