石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『リンケージ』(倉田嘘、一迅社)感想

リンケージ (IDコミックス 百合姫コミックス)

リンケージ (IDコミックス 百合姫コミックス)

キャラの層が幅広い百合短編集

6本の短編が収録された百合作品集。OLから中高生、音大生、科学者やロボットまで、幅広い層のキャラクタが優しいタッチの立体感ある絵柄で描かれています。女性同士の恋を「禁断の花園」的な箱庭にとじこめておかないところや、やたらとタチネコ固定して男女恋愛を模倣したりしないところが好印象。ただし、キャラの心情説明をモノローグに頼りすぎるきらいがあり、そこだけはちょっと残念でした。

キャラ(と、その役割)の幅広さについて

キャラたちの年齢層も立場も非常にバラエティ豊かで、楽しめました。また、基本的にリバ話が多く、「積極的な側=愛撫する側=男役」「受け身な側=愛撫される側=女役」みたいなアホな役割固定が見られないところもよかったです。「お姉さま〜」的なテンプレ女子校百合や、ヘテロロマンスをなぞっただけの「男と女ごっこ」とはまた違う、自由度の高い作品集だと思いました。ちなみに個人的にいちばん好きなキャラクタは、「行こうか直球?」と言い放つ岡本さん(『キコエルスズノネ』)です。あのアグレッシブさがたまらんです。

絵柄について

柔らかい線なのに立体感があり、重力もちゃんとかかっていて、それでいてきちんと「漫画の絵」しているという、とても魅力的な絵柄です。キスシーンの唇のフォルムとか、色っぽくてステキでした。緻密に描き込まれた背景もすばらしかったです。

モノローグ多用について

キャラクタの気持ちや感情を説明するのに、あまりにもモノローグが多く使われすぎている気がします。特に顕著なのは「プレゼント」「欠片」あたりでしょうか。もう少しストーリーを練り込んで、説明台詞ではなく絵やエピソードでキャラの心情が伝わる構成にしてくれたら、もっと嬉しかったかも。

まとめ

ありがちな女子校ストーリーにも「男と女ごっこ」にも与しない、新鮮味のある百合短編集でした。絵のうまさもとてもよかった。上には書ききれなかったのですが、近親愛要素も面白かったです。惜しむらくは説明台詞がやや多すぎることですが、それは次回作に期待ということで。倉田嘘さんはこれが商業デビュー作とのことですが、おそろしい新人さんもいたものだと思います。