石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ももいろスウィーティー(1〜4)』(ももせたまみ、白泉社)感想

ももいろスウィーティー 1 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 1 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 2 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 2 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 3 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 3 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 4 (ジェッツコミックス)

ももいろスウィーティー 4 (ジェッツコミックス)

人間のしょうもなさを肯定する桃色4コマ(百合あり)

『せんせいのお時間』もよかったけど、これもまたいいなあ。『ももいろスウィーティー』は、三十路の未亡人「春花」とその娘「夏海」、家政婦の「サエコ」、夏海の先生「ヒロコ」の4人を軸に繰り広げられる、ちょっと下ネタ多めの4コマ漫画。ヒロコに片想いする生徒の「かどちゃん」(♀)がしょっちゅう出てくるところが百合百合しくて楽しいのですが、春花やサエコのヘテロ恋愛にもしっかりと工夫がこらされていて面白いです。何より、どのキャラも人間臭い魅力にあふれているところが最高。人間のしょうもなさを軽やかに肯定してみせる、楽しいギャグ作品だと思います。

かどちゃんの百合恋愛について

かどちゃんはヒロコ先生の教え子のひとり。ヒロコへの報われない想いに1人身を焦がすけなげな少女なのですが、特筆すべきは

  • ヒロコがありがちな「お姉様」でも「王子様」でもないこと
  • 「淡い憧れ」ではなくはっきりと欲望が表現されていること

の2点。
まず、ヒロコが「フェミニンな美人なのに中身は『味噌煮込みで育っとる』熱血中日ファン、野球と酒が何より好きで、いろいろ残念なところもあれど憎めない人」というキャラであるところが非常にユニークだと思うんですよ。かどちゃんときたら、こんなヒロコにあばたもエクボ的にきゅんきゅんしたり、夢精ならぬ夢鼻血まで出したりしてそりゃもう大変なことになっています。その「あばたもエクボ」具合がいかにも恋の魔力を思わせて(いや、ヒロコにはヒロコの独自の魅力があるんですけどね!)、読んでてニヤニヤしてしまいました。要するにかどちゃんの恋愛は、「ヘテロ女子が、抑圧された性欲をキラキラしたファンタジーに振り向けてハァハァする」というありがち百合パターンとはまったく違うところにあるわけで、そこがとてもよかったです。

春花やサエコのヘテロ恋愛について

この人たちの恋もまた一筋縄ではいかなくて、面白いんですよ。三十路巨乳未亡人な春花がつきあっている相手が、コスプレセックス好きな男子高校生だったりとか。ある意味犯罪ですよね、これ(というか、ジョン・アーヴィングの『未亡人の1年』とか連想しましたけど)。さらに、クールでS気質のサエコが好きなのがどこか情けない男性の「みっちゃん」で、その情けなさがツボできゅーんとしまくってたりするところもよかった。普段からややツン気味のサエコですが、ベタなツンデレとはまたひと味違う恋心が展開されていて面白いんです。そんなわけで、どちらのヘテロ恋愛にも新味があって、楽しく読めました。

人間のしょうもなさの肯定

上記のかどちゃんもヒロコも春花もサエコもみっちゃんも、それぞれしょうもない部分を抱えていて、そこがかえってすごく魅力的というキャラ造形になっています。さらに、コメディーリリーフとして大活躍の夏海にしても、平気でおならネタとかトイレネタとかの話をしちゃったりして(ちなみに下ネタはエロ方面・トイレ方面共に多めの漫画です)、「美少女はトイレに行かない」とか思いたい人なら憤死しそうなキャラだったりするんですよ。この漫画がユニークなのは、キャラたちのそういうダメなところというか人間臭いところを微苦笑とともにいとおしむ視点があるところだと思います。

まとめ

かどちゃんのガチ百合恋愛もよかったし、何より生き生きした人間臭いキャラ描写が良くて、とても楽しく読めました。百合だけがテーマのお話ではないのですが、すっきり笑えて元気が出るちょいエロ4コマをお探しの方にすごくおすすめです。