石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『雲の路』(すえひろがり、コアマガジン)感想

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すえひろがり

コアマガジン 2009-06-30
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学園羞恥露出エロ漫画(百合あり)

露出願望のある女子高生「ハナ」と、理解あるクラスメイトたち(男女両方)が、一歩また一歩と集団露出プレイの道を歩んでいくという18禁エロ漫画。あっけらんとした表紙とはうらはらに、中身はねっちり濃いエロスと爽やか友情ストーリーの二重奏となっており、他に類を見ない面白さがありました。露出というアンモラルなテーマを扱いつつ、同意のない性行為を決してよしとしないところがとてもよかった。また、女のコ同士のエロが多め(ガチカプあり)で、セクシュアリティの描写がこまやかなところもよかったです。

とにかく濃いエロス

まず、性器描写の濃厚度がハンパないです。第1話からしてハナの公開オナニーのシークエンスがあるのですが、ねっちりと微に入り細を穿つ局部描写に度肝を抜かれました。もちろん消しは入っているんですが、それなりにエロ漫画を読んでいる自分ですら「こ、ここまで描いちゃっていいんですか」とたじろいでしまうぐらい。また、体だけでなく心理面の描写もいやらしくてよかったです。露出にまつわるハナやクラスメイトたちの興奮具合など、とても繊細かつ官能的に描かれていると思います。

「露出はOK、でも性暴力は不可」なストーリー

露出ものということで、当初はちょっと不安もあったんですよ。ハナが露出願望につけこまれて性的に搾取されたり踏みにじられたりするだけのエグい展開になったら嫌だなあと思って。いや、そういう鬼畜な展開がお好きな方ももちろんいらっしゃるのでしょうが、そういうパターンって既に陳腐すぎると思うんです。あと、そこまでいったらただの「鬼畜陵辱もの」であって、純粋な「露出もの」とはまた違った文脈になってしまう、ということもあります。

ところがこの漫画は、ありがちな性暴力漫画とはひと味もふた味も違っていました。興奮した男子たちがハナを暴行しようとするような展開も一部にあるんですが、そこでハナ自身に

この人たちの態度はないよ……

と言わせ(p. 29)、他の女子たちに

ハダカ見せても襲う方が悪い!

ときっぱり言い切らせている(p. 31)んですよ、この作品は。で、その後、ハナの味方たち(男女両方)が進んでハナを守り、一定のルールの元に「Hな遊び」を続けるという展開になっていくんです。つまり、ハナは露出願望がある変態(と自称してます)だけれど彼女の意思は最大限に尊重されており、エロ行為は全て同意の元で行われる、という筋立てなんです。やがてクラスメイトたちも自ら露出を楽しむようになり、集団セックスにまで発展していくのですが、そこでも無理やりな行為は一切なし。なんとコンドームもきちんと使うというまともさです。エロエロなのに、暴力ではなくあくまで愛とリスペクトに支えられたお話であり、ちょっと森奈津子さんの官能小説を連想したりしました。

女のコ同士のエロも多め

女性同士の性愛は質量ともに豊富です。レズビアンカップルあり、ヘテロだけど女子ともセックスする人あり、バイセクシュアル女子ありと、キャラのセクシュアリティが細やかに描き分けられているところが面白かったです。また、女性同士のセックスが決して「男女セックスのオードブル」なんかじゃないところもよかった。女子カップルに

一度くらい男としておくのも人生経験として……ねぇ?

じゃあ見てるのはいいだろ

(引用者中略)

好きなんだよね百合って

などと鼻の下を伸ばして迫るバカ男がきっちり出てきて、

見せ物じゃNeeeeee!

と思いっきり怒られている(p. 157)ところなど、笑いました。

個人的に一番好きな百合キャラは「お竜さん」こと竜ヶ窪さんかなあ。おそらくはバイセクシュアルなお竜さんですが、ここ一番でハナやクラスメイト女子を守る漢っぷりと、有無を言わせぬフィンガーテクニックに惚れました。ヘテロ女子の石和さん相手の恋も、彼女なら平気で突き進んでいきそうで、そんなところも好きです。

その他

  • これだけねっとりとエロい作品なのに、同時に爽やかな友情ストーリーとしても成立しているというところがすごく面白かったです。脳内の「性とは」「露出とは」みたいな規範を根底からゆさぶるクィアさがあるお話だと思います。
  • ローター(egg vibrator)が本来の使われ方をしているエロ漫画を見たのは、これが初めてかも。感動。
  • 女子にはいろんな人がいるのに、男子が全員異性愛者だっていうところだけはちょっとひっかかりました。18禁エロ漫画というジャンル上、想定読者層(おそらくはヘテロ男性)にいちいち拒否反応を起こされても困るってことなんでしょうけど、そこをクリアしてくれたら神だったのになあ。

まとめ

「露出」というテーマのもとに濃厚なエロスと爽やかな友情ストーリーとを両立させた、非常にユニークな作品でした。クラス全員を巻き込んでいく「Hな遊び」が終始愛とリスペクトに満ちているところがいいし、女のコ同士の性愛描写のきめ細かさもよかったです。欲を言うと男子にも非ヘテロなキャラがいるともっと良かったんですが、そこまで要求するのは酷かなあ。テーマがテーマだけに、露出ネタや男女エロが苦手な人には向かないかと思いますが、そうでなければすごくおすすめ。