石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

百合アンソロジー『つぼみ VOL.3』(芳文社)感想

つぼみ VOL.3 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

つぼみ VOL.3 (まんがタイムKRコミックス GLシリーズ)

今回はややパワーダウン。その中で燦然と輝く「しまいずむ」(吉富昭仁)

芳文社の百合アンソロ、第3弾。吉富昭仁さんによる「しまいずむ(その4〜5)」が実にすばらしかったです。さりげない伏線が後になってガーンと効いてくるところがたまりません。大石まさるさんによるカラーイラスト&モノクロ1Pマンガの「つぼみが始まるよ」も楽しかった。他にも面白い作品がいくつか。ただし、全体的に見ると、今回は1〜2巻に比べて大味というか、ツッコミどころが目立つ作品が多めなような気がします。そこがちょっと残念。

「しまいずむ(その4〜5)」について

親友にしてどちらもヘンタイな「遥」と「芳子」のふたりがそれぞれの妹にモエモエしている、というシリーズの第4〜5話です。

心のアバラ骨が数本折れたわ…

いいよもう私 魚類で…

など、今回も腰が砕けそうなギャグが冴え渡っています。遥と芳子の、「おまえら男子中学生か!」とツッコミたくなるほどの悶々ぶりにも笑いました。興奮時のふたりのうつろな瞳の描き方とかね、「少女」とか「百合」とかをベッタベタに美化するだけの百合作品とは180度違う面白さがあり、楽しく読みました。

今回さらに面白いのは、「思春期の悶々ギャグとして秀逸なだけでなく、実はほのかな恋心をこっそり描くラブストーリーとしても機能している」という二重構造。主人公ふたりをこれだけギラギラハァハァさせつつ、秘めやかに「表面的なハァハァと『恋心』とはまた別物」というテーマをしのばせてくるハイテクニックに惚れました。「その4」の最後でごくごくさりげなく伏線を張り、「その5」で丁寧に回収し、さらに「魚類」ギャグでひねりを加えておバカなラストにつなげていく、という一連の流れが本当によかったです。

「つぼみが始まるよ」について

たった2ページの中に日常と冒険と恋とワクワクがぎゅっと濃縮されて詰まっており、見とれてしまいました。「絵」の力ってすごいなあ。ていうか、描いた大石まさるさんがすごいんですね、これは。

その他面白かったもの

「エビスさんとホテイさん」(きづきあきら+サトウナンキ)
ホテイさんの、気の毒なほどの心の引っかき回され具合が面白かったです。特にラスト2ページ。
「ペダルにのせて」(堀井貴介)
ストーリーの勢いと、「ジィちゃんから笑顔の技術は教わってへんねん」(p. 192)なイチのキャラが光ってました。
「アンバランス」(きぎたつみ)
「ま そこがいいんだけど!!」(p. 231)にすごく共感。

「大味というか、ツッコミどころが目立つ」(とわたくしが勝手に思った)点など

簡単にツッコンでみると、こんな感じです。

「ままごと」(杉浦次郎)
「結婚=赤ちゃんを作ること」という硬直した価値観にげんなり。
「恋路」(大朋めがね)
  • 眼鏡キャラの顔の区別がつきづらくて混乱しました。
  • 最初じゃなくたって爪が伸びてりゃ痛いですよ。こんな大雑把な感覚のタチってヤダ。男か。
  • 8年間も女と付き合ってる人が、この21世紀にわざわざ「アブノーマル」なんて古い語を選ぶかなあ。80年代ぐらいならともかく。無知な異性愛者か、ネットも見ず本も読まず飲みにも出ずLGBTのリアル友達1人も居ず、の田舎のヒキコモリレズビアンみたくて下げ。
「ともだち」(小川ひだり)
境界例のロマンティック化にしか見えないような気が。
「ひみつのレシピ」(森永みるく)
「恋」と「発情」をわざわざ分ける意味は? 発情しちゃったらもう恋じゃないんすか?

まとめ

「しまいずむ」があまりに素晴らしすぎたので、このためだけでも買う価値はあると思うのですが、VOL.1〜2ほどはおすすめしません。次号でまた元通りの路線に戻ってくれると嬉しいです。