石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『半熟女子(2)』(森島明子、一迅社)感想

半熟女子 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

半熟女子 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

もはや横綱相撲。可愛らしくもエロティックなラブストーリー、完結編

駆け出し♀♀カップル「八重」と「ちとせ」のみずみずしいラブストーリーの第2巻。これが最終巻となります。ふたりのキュートな「半熟」っぷりも、やわらかい絵柄のとろけるようなエロティシズムも、みんなよかった。1巻と変わらぬほどよいリアル感の中に、八重の成長やLGBTプライドのようなものをさりげなくしのばせてあるところも楽しかったです。もう一組の百合カップル「マリ」と「蘭」の甘酸っぱい恋も楽しかった! 前作もそうですが、女性が好きな女性が安心して読める素晴らしい漫画だと思います。

とろけるようなエロティシズム、そして可愛い「半熟」っぷり

さすがはダ・ヴィンチ2009年9月号での対談で「二の腕を固く描け! とか言われたら死んでしまう(笑)」とおっしゃっている森島明子さんだけあって、今回もやわらかく肉感的な女体描写がすばらしいです。ロリっぽい顔の描き方と相まって、可愛らしいのに官能的な、とろりと甘いエロティシズムをかもし出していると思います。

また、メインカップルの、好きで好きで何度も体を重ねながらも「中に入れてないのはセックスしたって言うんだろうか(要約)」と悩んだりするという愛すべき「半熟」っぷりもよかった。この微笑ましい初々しさは、『半熟女子』の醍醐味のひとつですね。

半熟なりに成長も

この漫画って、愛と自己肯定とそこから生まれる幸福感の物語だと思うんです。ポイントは、

  • 客体として愛されることで自己肯定を得るのではなく、主体として愛することで自己肯定できるようになっていく物語であること
  • 卑下してからゼロ地点に戻す「肯定」ではなく、プラスを積み重ねて行く「肯定」であること

の2点。

つまり、これって「誰かに愛されることで自分の商品価値に自信がついてハッピー☆」みたいな、女の価値を他者のまなざしではかること前提のお話ではないわけ。さらに、「同性同士なんてダメ」と一旦下げてから「愛に性別の違いはない! ヘテロと『同じ』なんだからいいんだわ!」と、ご丁寧にも「異性愛者と同じであること」を褒め称えてみせる物語とも違うわけ。『半熟女子(2)』の要諦は、以下のp. 52の八重のモノローグにあると思います。

そう(引用者注:女の子であるちとせの全部を自分は愛している、ということ)思える自分が嬉しい
…ん? ちょっと違う? たしかに嬉しいけど こう…もっともっと強い気持ち
そうか! ホコラシイだ!
女の子の私が女の子のちとせに恋してる それがとっても誇らしく思えるんだ

大げさに言ってしまうと、この「ホコラシ」さへの気づきって、LGBTプライドの発現だと思うんですよ。「女の子同士だけど」好きだとか幸せだというんじゃなくて、「女の子同士だから」好きで、誇らしくて、幸せだ、という強烈なポジティヴ感覚ですね。で、その感覚が自己の成長にもつながり、ひいては異性愛主義の世の中でサヴァイヴする力にもなる、という構造の物語なんです。すごく共感できるし、「百合漫画もここまで来たか……!」と感慨深いものがありました。

ほどよいリアル感

1巻と同じく、ほどよいリアル感が心地よかったです。同じ試着室でブラを試着してみる、むしろ相手につけてあげる、みたいな日常風景や、「女の子同士って手をつないでるだけで他人から見られるものなんだ」という発見、周囲の「オレ初めてレズ見たよ!」という無邪気な反応などなど、「あるある」「わかるわかる」の連続でした。性的な方面でのリアル感もよかった。キャラに堂々と

「貝合わせってあんまり気持ちよくないねー」
「格好もマヌケよね」

と言わせちゃうところとかね。「セックスとは股間の粘膜同士の摩擦である=レズなら貝合わせが主流のはず!」とか思い込んでるノンケの皆様(みんながみんなそうじゃないとは思いますが)は心して読むべし。さらに、ネコ側だけでなく、タチ側の目もくらむような快楽がきちんと描写されているところも当を得ているし、ファーつきハンドカフのような、いかにも女のコ同士のカップルが使いそうな小道具の使い方も心憎かったです。

マリと蘭について

ギャル生徒と女性教師という組み合わせのこのカップルですが、八重とちとせの良き先達であるだけでなく、実はこのふたりもまた甘酸っぱい恋の真っ最中であるところが楽しかったです。ジョギング中の蘭のあのさわやかな(笑)台詞や、マリから八重への身も蓋もないアドバイスなど、エロと笑いの担当としても面白いです。また、そうした発言が単発のギャグにとどまらず、ラストシーンまでつながる意味をきちんと持っているところもすばらしい。この2人がいることで、お話の広がりや説得力がより増していると思います。

まとめ

タイトルこそ「半熟」ですが、完熟した甘いフルーツをこころゆくまで味わったときのような満足感が得られる作品だと思います。女の子同士だからこそ大好きで、嬉しくて、誇らしいというポジティヴな雰囲気がとてもよかったし、2組のカップルの初々しい「半熟」っぷりも愛らしかったです。やわらかくキュートな絵柄や、さりげないリアル感の魅力についてはいわずもがな。1巻ともども、超おすすめ。