石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『渚のハイQ部(1)』(胡せんり、一迅社)感想

渚のハイQ部 1 (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)渚のハイQ部 1 (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

一迅社 2009-07-22
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可愛いし面白いんだけど、百合ものとしてはブレ気味?

離島の小さな学校のビーチバレー部を舞台とする萌え百合4コマ。絵柄はキュートだし、キャラたちの細かな心の機微も楽しいんですが、百合ものとしては今ひとつ軸がはっきりしないところが気になりました。あと、鼻血キャラや外見が幼女な大人キャラなど、今さらな設定が多いところもややマイナス。単なるほのぼの4コマとしてはじゅうぶん面白いんですが、もう一皮むけてくれたらもっと嬉しいかも。

軸のブレについて

この漫画のメインキャラはボーイッシュ娘「あきら」、巨乳乙女「珠樹」、パペットで意思疎通する無表情少女「亨」、妄想メガネっ娘「千代」の4人です。

亨の煽りによって第1話で既にあきらと珠樹のキスが実現しており、この回だけ見るとあたかも「あきらと珠樹は亨も認めるカップルで、亨は単に珠樹の乳に関心があるだけ」という風に読めます。つまり、「あきら×珠樹+亨」みたいな。ところが、その後亨はなぜか珠樹と結婚したがったりキスしようとしたりし始め、お話は「あきら×珠樹←亨」路線にチェンジ。さらにその後、あきらにベタ惚れの千代の登場と共にあきらはハーレムエロゲの主人公のごとき鈍感キャラと化し、物語は「千代→あきら←珠樹←亨」状態に。恋模様の軸が短期間でコロコロ変わる(ように見える)ため、何がしたいのか、よくわかりません。

俯瞰して見るならば第1話のキスの意味づけは実はものすごく軽く、亨があきらと珠樹のキスを煽ったことにも特に意味はなかったということになるのだろうとは思います。しかし、1巻後半の「鈍感あきらモテモテ状態(亨は珠樹に横恋慕)」をお話の基本路線に据えるのであれば、やはりあのエピソードはミスリーディングだったのではないかという印象がぬぐえません。

今さらな設定について

千代の鼻血噴出ネタとか、小学生にしか見えない女教師の北村先生ネタとか、既視感ありすぎ。せっかくビーチバレーという珍しい素材を扱っているのに、キャラがステレオタイプ続出というのはかなりもったいない感じです。

キャラの心の機微について

一部のキャラたちに代表される、こまやかな心情描写が楽しかったです。一見ただのエロ教師な顧問・佐野先生の意外な側面といい、見かけはボーイッシュなあきらの乙女な部分といい、人間らしい深みがあってとてもよかった。逆に言えば、だからこそ千代や北村先生など、今のところテンプレをなぞっているようにしか見えないキャラクタたちに消化不良感が残る、とも言えます。2巻以降でこれらのキャラたちも大化けしてくれると嬉しいのですが。

まとめ

単なるほんわかギャグ漫画としては決して悪くないだけに、百合方面の軸の定まらなさと一部設定の古さが惜しまれるところです。次巻以降に期待。