石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『乙女王子〜女子高漫研ホストクラブ〜』(888、芳文社)感想

乙女王子~女子高漫研ホストクラブ~ (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

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百合というより「バーチャル男女恋愛」の世界

女子高の漫研が廃部寸前に陥り、資金集めのため校内で男装ホストクラブを始めるというギャグ作品。漫研をつぶそうと目論む一派が男装ホストにメロメロになるあたりが百合と言えば百合です。ただし、これは基本的に異性愛者女子同士の「バーチャル男女恋愛」を描くお話であり、個人的にはあまり百合っぽいとは感じませんでした。一箇所だけ女のコ×女のコの展開もないではないのですが、こちらは恋というより単なる「お姉さま萌え」であって、同性愛の香りは薄いです。特に百合を標榜している作品でもありませんし、あくまで男装ホストネタのドタバタコメディと受け取っておくのが吉かと。

「バーチャル男女恋愛」について

「漫研廃部をもくろむ生徒会副会長が、男装ホストのひとり『ロドリゲス』にマジ惚れしてしまう」というのがお話の大きな柱です。クライマックスとなる第8話では、この副会長の恋心や、欲望や、失恋の苦い涙などがきわめてていねいに描かれており、とてもよかったです。けっこうきわどい台詞もあったりして、ドキドキハラハラさせられました。

ただし、副会長が惚れているのはあくまで架空の男性である「ロドリゲス」。ロドリゲスを演じている女子高生の「昌(あきら)」を好きなわけではありません。ちなみに副会長はロドリゲスが昌によって演じられているキャラクタであることを知り尽くしており、その上で「ロドリゲス様…」と熱を上げているんです。つまりこれは、「女子高生×女子高生」ではなくて、「女子高生×架空の男性キャラクタ」の恋愛なわけ。百合というより、二次元萌えに近いものだと思います。そんなわけで、この副会長の恋が「百合」だとはあたしにはあんまり思えませんでした。

「お姉さま萌え」について

男装の漫研部員「宇田川」にほっぺチューで籠絡された生徒会書記が、すっかり宇田川にのぼせあがり、

私のお姉さまになってください!!

と騒ぐ場面(p. 161)があります。でもこれも恋愛というより単なる「百合萌え」「お姉さま萌え」に見えてしまい、あたしには合いませんでした。そもそも、書記に上記のように叫んで抱きつかれた宇田川の側が、

キャーやだやだそんなのイヤッ
離してェェェ!!!

と本気で叫んでおり(p. 161)、意思疎通すら成立していないところもネック。結局この組み合わせも「女子高生×女子高生」ではなく、「女子高生×架空のお姉さまキャラクタ」であり、女のコ同士の恋とはまたちょっとちがう文脈のものだとあたしは受け取りました。

その他

ほっこりしたギャグ漫画&青春漫画としてはじゅうぶん面白かったです。ストーリーの組み立てがきちんとしていて、結末にカタルシスが用意されているところもすばらしかった。

まとめ

形の上では女子高生が女子高生に熱を上げているかのような展開が2種ほどありますが、よく見ると両方ともバーチャル恋愛にすぎず、実質的には女のコ同士の恋は存在しない作品だと思います。そんなわけで、百合ものとしてはおすすめしません。あくまで「ヘテロ女子たちの、男装ホストクラブをめぐるドタバタもの」として楽しく読んでおくのがよいと思います。