石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『まん研(3)』(うおなてれぴん、芳文社)感想

まん研 (3) (まんがタイムKRコミックス)

まん研 (3) (まんがタイムKRコミックス)

妄想系百合ネタ復活、ほんのりと片想いな人も

女子校の漫画研究会「第2まん研」を舞台とするギャグ4コマ最終巻。2巻ではなりをひそめていた百合ネタが、すごい勢いで復活しています。そのほとんどが萌え重視の百合妄想ではありますが、ひとりだけ同性に片想いしている脇キャラもいたりします。全体としては、これまで通りのコスネタやイベントネタに加えて、「ベタをネタに昇華するメタ漫画」的な面白さがあってよかったです。余韻を残す最終回もステキでした。

百合ネタ復活(ただしほとんどが萌え妄想)

しいなとレイコの百合妄想がスパークする1冊でした。巻頭カラーでまで乳は触り合うわキスしそうになるわと、もうベッタベタです。もちろん咲もさまざまな妄想の毒牙にかけられています。ただし、『まん研(3)』における百合ネタは、99パーセントまでが単なる「萌え」。恋愛要素は皆無に近い上に、異性愛者を「ノーマル」と呼んで恥じないといういかにもヘテロオタクっぽい鈍感さもあり、そのへんが気になる人にはちょっと厳しいかも。

とは言え、第1漫研の香澄がくーちゃんに片想いしているという設定があることはあり、そこだけはほんのりとガチ恋愛テイストです。この漫画を百合ものとして読むのなら、第2まん研の皆様のアホな妄想を割り切って楽しみつつ、時折出てくる香澄の恋模様にニヤニヤするというのがいいんじゃないかと思います。

ベタをネタに昇華するメタ漫画

この3巻ですごく面白かったのが、ただの同人ネタ・オタクネタだけに終わっていないこと。相変わらずコスだのイベだのコピ本だのというコアな話題も盛り込みつつ、同時によくある漫画的表現をメタ視して遊ぶ楽しさもたっぷりと詰め込まれているんです。ありがちな幼なじみネタや家庭教師ネタをシミュレートしてみたり、ブルマの色や古今の制服を比較してみたり、ベタなキャラ付けを分析してみたりと、考察範囲の広さと細かさはまさに圧巻。おまけにそうした考察が、「蘊蓄」ではなく「ギャグ」としてきっちり昇華されているところがすごくいいんですよ。漫画・ゲーム・アニメ好きなら楽しめること間違いなし。

着眼点も鋭く、たとえば物語には取捨選択が必要だという流れでの

例えば服を脱ぐシーンでいちいち靴脱いで上着脱いでシャツ脱いで…って描かないでしょ?

という説明や、漫画における音声についての、

よくキスした時に「チュッ」て描くけどあれもある意味マンガ的表現よね(引用者中略)だってほら実際には唇を合わせた時じゃなく離した時に出る音じゃない

という発言など、目ウロコでした。「漫画をネタに漫画で遊ぶ」というアクロバティックな芸当は、こうした観察眼に支えられているんですね。

最終回について

最終回でも「ベタをネタにして遊ぶ」とうパターンは健在。バトル物アニメやギャルゲの最終回パターンを肴に盛り上げてくれるのですが、その後でやってくる『まん研』自体の結末が実にさりげなくて心憎かったです。ちょっと寂しいんだけどほのぼのしていて、余韻もあって。作中でとあるキャラが好きだと言っていたエンディングパターンを実際に完璧な形でやってみせてくれていて、唸らされました。

まとめ

「オタクネタ+ライトな百合ギャグ」の1巻、「同人あるあるネタ」の2巻ときて、3巻は「(同人のみならず)オタクコンテンツ全般ネタ+再び百合ギャグ」という構成になっていたと思います。終わり方もきれいで、個人的には3巻がいちばん好きかなあ。百合ものとしては恋愛よりも萌え主体なため読む人を選ぶかもですが、イロモノ寄りのオタクネタギャグ漫画としてはじゅうぶんにおすすめできる作品だと思います。3人娘の全身タイツ姿がもう見られないのかと思うと寂しいです。