石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『海洋危険生物う〜みん(2)』(臣士れい[画]/里尾昴[原作] 、ワニブックス)感想

海洋危険生物う~みん 2 (GUM COMICS)

海洋危険生物う~みん 2 (GUM COMICS)

百合としては散漫、漫画としても不完全燃焼

中学生の「守美汐」(まもり みしお)が海の眷属を守る変身ヒロインとして戦うアクションコメディ。最終巻です。1巻にあった恋愛要素はいつの間にやらうやむやになってしまっており、百合としてはかなり投げっぱなしな印象を受けます。女性同士での絡みは一応登場しますが、陳腐な「セックスで女性を絡め取る魔性のレズビアン」パターンにすぎず、今ひとつ。ちなみに本筋の方も、無難にまとまってはいるものの、海を守るというテーマには最後まで斬り込みきれていません。まとめると、「百合としても漫画としてもぬるい完結編」といったところ。

恋愛要素がうやむやに

巻の序盤あたりでは丈瑠が美汐と手をつなぎたがったり、美汐が櫂渡相手に「漁師の妻の座」を夢見たりと、女女恋愛とヘテロ恋愛の両方が描かれています。ところが途中から恋愛要素はすべてどこかに行ってしまい、最終話でも完全にノータッチ。そういうわけで、この2巻には百合はおろかヘテロ恋愛方面にも期待しない方がいいかと。1巻にあった三角(厳密には四角?)関係をあたしはサブプロットだと受け取っていたのですが、サブプロットというより単なる場の賑やかしであったと解釈し直しておいた方がよさそうです。

なお、この巻でも美汐の変身時のう〜みんとのキスは健在ですし、皇公子(すめらぎきみこ)が丈瑠を肉体的に誘惑する場面なんかもあることはあります。よって、絵づらの上では百合っぽいと言えないこともありません。が、惜しいかな、どちらの関係にも気持ちがまるで伴っていないところが致命的。美汐とう〜みんの間に恋愛感情がないことは「特別編 初恋ジェノサイダー」でも確認されている通り。また、公子が丈瑠を抱きすくめ股間をまさぐるのも、古典的な「モンスター型レズビアンがセックスの力で善良な女性を籠絡する」パターンであって、恋も愛もそこにはないんです。そんなわけで、個人的にはたいそう肩すかし感の強い一冊でした。

本筋もぬるいかも

美汐の戦う敵が漁師から別の相手へと切り替わっていくところまではいいんですが、なぜラスボスが「陸の王者の後継者」なんだか理解できません。海の眷属にとって最大の敵は、海を大事にしない人間じゃないの? 「陸の王者(の後継者)」というファンタジックな存在を設定して、主人公が特撮ヒーローよろしくそれと戦って終わりというのでは、「環境問題に斬り込む完結編!?」というカバー裏の言葉と矛盾するのでは。それとも、だからこそ「!?」をつけてお茶をにごしたというわけなんでしょうか。

いや、お話の随所に登場する、「人や生き物たちの願いや思いを知る」というテーマは確かに環境問題につながっているとは思うんですけどね。でも、海を守るといいながら、一番の黒幕たる「人間」の所業に最後まで目を向けないというのはずいぶんなまぬるいと思うんですよ。これなら手塚治虫の短編「海の姉弟」でも読んだ方が、よっぽど海を守るということについて考えさせられると思います。

まとめ

恋愛要素は立ち消えになってしまっているし、本筋もピントのズレた展開になっているしで、なんだかしっくりこない完結編でした。残念。