石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『二人のひとりあそび』(森奈津子、徳間書店)感想

二人のひとりあそび (徳間文庫)

二人のひとりあそび (徳間文庫)

ハードカバー版『倉庫の中の美しき虜囚』に2編を加えた文庫版

買うまで気づかなかったのですが、これって『倉庫の中の美しき虜囚』(ベストセラーズ)を改題した文庫版だったんですね。文庫化に際し、新たに「姉の花、妹の指」「二人のひとりあそび」のレズビアン短編2編が収録されています。元々がSMセックスからゲイ/レズビアンセックス、自慰、近親、ホラーなどさまざまな要素を含む官能短編集だったのですが、この2編を加えることでさらに♀♀色が強くなり、レズビアンエロスをお求めの方によりおすすめできる内容となっています。

「姉の花、妹の指」について

姉の彼氏を奪い続ける妹は、実はお姉ちゃんが好きでたまらなかった――という、ある意味よくあるストーリーなのですが、手堅い展開で最後まで飽きさせません。姉妹同士のSMセックスのいやらしさはもちろん、支配・被支配のあざやかな反転にもドキドキさせられました。加虐が加害に、被虐が被害に直結しないどころか、むしろ「マゾヒストのMはマスターのM」という原則に忠実なお話であるところが面白かったです。

「二人のひとりあそび」について

自慰行為の見せ合いをきっかけにしてレズビアン関係がスタートする物語。用語やキャラの名前、そして口調などがちょっと古めかしいのですが、これは発表紙「日刊ゲンダイ」の読者層に合わせてのことかと。内容自体はじゅうぶんに新しいです。女性の欲望を肯定し、かつ、女性の性欲が必ずしも異性への興味と直結しないことをきっぱり示しているところが、特に。他には、エロ描写が膣にばかり集中していないところもよかったです。おっさん向けのポルノって、膣刺激に異様にこだわり、あとはせいぜいクリトリスと乳首を適当に愛撫して終わりだったりするじゃないですか。でも、さすが森奈津子作品だけあって、この短編ではそんなことにはならないんです。

その他

新しく収録された2編だけ読んで終わりにしようと思ったのに「人形草」を読み始めたら止まらなくなり、結局他の作品も全部読んでしまいました。改めて読んで見ると「少女と少女」(これもレズビアンものです)の頼子の理屈とか、興味深いものがあります。

まとめ

『倉庫の中の美しき虜囚』を既読の方でも読む価値は十分にあると思います。ただし、今回新たに収録されたレズビアン短編は、同作者さんの『先輩と私』『夢見るレンタル・ドール』に比べるとやや口調が古く、百合というより古き良きエロ小説寄り。そこさえ気にならなければおすすめです。

より古き良きエロ小説寄り。そこさえ気にならなければおすすめです。