石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

この百合がすごい! 2010

2010年にレビューした百合/レズビアンもののうち、特におすすめの10作品(順不同)のリストです。

漫画『羣青(上)』(中村珍小学館

羣青 上 (IKKI COMIX)

羣青 上 (IKKI COMIX)

これは読むべきだ。頼む、読んでくれ。ひとことで言うなら、この物語はふたりの女の逃避行。暴力夫を持つ人妻が、自分に惚れているレズビアンを使って夫を殺させ、なしくずしにふたりで逃げ続けるという物語。「通りいっぺんの『愛』とか『絆』なんて言葉じゃくくれない、これは『宿縁』または『業』だ」というのはあたしの読書中メモですが、もうほんとにただのラブストーリーなんてものを越えまくったお話。読んでいる間じゅう、冗談抜きで心拍数が上がりっぱなしでした。

漫画『Girlish Sweetアタシノ彼女』(竹宮ジン、白泉社

Girlish sweet―アタシノ彼女

Girlish sweet―アタシノ彼女

オムニバス形式で綴られる、極上の百合物語。基本的に学生ものですが、社会人キャラも登場します。キャラクタの表情の力強さがまずすばらしいし、動と静のコントラストがくっきりした絵柄そのものにも強く惹かれました。そして何よりも、キュンキュン来るストーリーの深みが最高。可愛いなあ、ドキドキするなあと思いつつ読みすすめるうちに、意外なところでぐっと涙腺を刺激されるという展開にやられっぱなしでした。

漫画『GIRL FRIENDS(5)』(森永みるく双葉社

GIRL FRIENDS(5) (アクションコミックス)

GIRL FRIENDS(5) (アクションコミックス)

女子高生同士のキュートな初恋物語、ついに最終巻。すばらしかったです。体の関係を含む恋愛を描くにあたり、セックスが「目指すべきゴール」でも「魔法の万能薬」でもなく、もっと身近でいとおしいこととして位置づけられているところが非常によかった。行為そのものの描写も繊細で、いかにも女のコ同士な雰囲気でした。女子同士で付き合っていく大変さと幸福を、篇に構え過ぎずにさらりと綴っていくところもいい感じ。地に足がついた、それでいて愛も夢もしっかりある百合物語だと思います。

漫画『しまいずむ(1)』(吉富昭仁芳文社

しまいずむ (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

しまいずむ (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

「遥」と「芳子」の女子中学生ふたりが互いの妹に萌え萌えムラムラする百合ラブコメ。人としてかなりダメな姉たちのヘンタイっぷりと、その陰に秘められた甘酸っぱい恋模様との二重構造がたまりません。みずみずしいエロティシズムもよかったです。第1話のその後を掘り下げる描き下ろし作「ぼーなすとらっく ぞくおとまり」など、その典型かと。

漫画『ミカるんX(5)』(高遠るい秋田書店

ミカるんX 5 (チャンピオンREDコミックス)

ミカるんX 5 (チャンピオンREDコミックス)

美少女合体戦士「ミカるんX」が活躍する特撮系百合漫画の第5巻です。いつにも増して熱い1冊で、大満足。女のコ同士の愛とエロスも、容赦のないバイオレンス描写も、とても楽しく読みました。特に第弐期第陸話のミカの激情の描き方がたまらんです。ラブストーリーでもあり、成長物語でもあり、そして少年漫画の王道をひた走るアクションものでもあるというすげえ回だったと思います。これだからこの作品を読むのはやめられない!

漫画『この靴しりませんか?』(水谷フーカ芳文社

この靴しりませんか? (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

この靴しりませんか? (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

シンデレラや赤ずきんなどの童話を下敷きに、現代のさまざまな百合話を描いた短編集。面白かったです! やわらかくやさしい雰囲気と、それでいてしっかりラブいストーリーがたまりません。特筆すべきは、幕引きのうまさ。どのお話も、控えめなのに余韻あるオチにきれいに着地していて、とても楽しく読みました。また童話モチーフの生かし方もみごとで、なつかしいのに新しい、ユニークな1冊に仕上がっていると思います。

漫画『とある科学の超電磁砲(4)』(冬川基[画]/鎌池和馬[原作]、アスキー・メディアワークス

近未来SFアクション第4巻。序盤ではせいぜい黒子が美琴のベッドにもぐり込んでいるぐらいで、さしたる見せ場はなかったため、「今回は百合展開は無しなんだろうか」と思ったんですよ一瞬。ええ、明らかにわたくしが間違っておりました。この巻の特に後半は、「姉妹百合」や「お姉さま」の概念の新しい地平を切り開く逸品。何度読み返しても目から変な汁が出そうになるページがあります。

小説『サイゴン・タンゴ・カフェ』(中山可穂角川書店

すべての物語にアルゼンチンタンゴが登場する恋愛小説集。中でもレズビアンの老作家が出てくる表題作「サイゴン・タンゴ・カフェ」が圧巻です。先が読めないストーリーと、とろりと甘いベトナムコーヒーのような濃厚さにしびれました。その他の収録作も、ヘテロ話も含めてみんなよかったし、こんな短編集が読めるのは幸福と言うよりほかありません。

小説『花伽藍』(中山可穂角川書店

花伽藍 (角川文庫)

花伽藍 (角川文庫)

なんて贅沢な短編集だ、と思いました。収録されたどの作品も、研ぎ澄まされた文体、鮮やかなイマジネーション、圧倒的なラストと、非の打ち所がありませんでした。女性同士の愛を描いた小説をお探しの方に、今いちばんおすすめしたい 1冊です。

小説『クシエルの矢(1~3)』(ジャクリーン・ケアリー[著]/和爾桃子[訳]、早川書房

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈2〉蜘蛛たちの宮廷 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈2〉蜘蛛たちの宮廷 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈3〉森と狼の凍土 (ハヤカワ文庫FT)

クシエルの矢〈3〉森と狼の凍土 (ハヤカワ文庫FT)

ローカス賞受賞の絢爛たる歴史ファンタジーです。何この面白さ!! これから読み始める人は、1巻から3巻までぶっ通しで読めるだけの時間を作ってからの方がいいです。序盤こそとっつきにくいものの、そこを過ぎればもうあなたは物語の虜。被虐を快楽に変える<アングィセット>に生まれついた主人公フェードル(♀)と、嗜虐を好む血を持つ貴族メリザンド(♀)との壮大な愛憎劇に首根っこをつかまれ、「最後まで読まなきゃ息もできない」という状態に叩き込まれてしまいます。それでいて、ただの百合だの恋愛物だのという枠には絶対におさまらないんですよこの作品。権謀術数うずまく歴史物として最高に面白いし、ファンタジーとしての力強さ・壮大さはロバート・E・ハワードのコナン・サーガにも劣りません。