石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『よくわかる現代魔法(全2巻)』(宮下未紀[画]/桜坂洋[原作]、集英社)感想

よくわかる現代魔法 1 (ジャンプコミックス)

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微百合と言えば微百合、非百合と言えば非百合

ドジっ子女子高生「森下こよみ」が、プログラムコードで実行される「現代魔法」を学ばんとして魔女の「姉原美鎖(あねはら みさ)」に弟子入りするドタバタコメディ。百合っぽいという噂を聞いて購入してみたのですが、結論としては「微百合と言えば微百合、非百合と言えば非百合」かなあ。わりかし百合百合しい言動をとるキャラクタもいるにはいるのですが、それも「ツンデレ」の一言で処理できてしまうような気が。また、こよみ本人がうっすらと美鎖の弟に惹かれている(かも?)という描写もあるので、♀♀方面には過大な期待をかけない方がよろしいかと。全体的にはテンポよく読める良質のギャグ作品だと言えますが、最後まで回収されない伏線が一部あるところがちょっと気になりました。原作小説を読んでないと無理なのかしら。

わりかし百合百合しい「一ノ瀬弓子クリスティーナ」について

弓子はこよみのことが気になって仕方ない魔法使い。こよみにプレゼントを渡しながら

べっ別にプレゼントしたくて買ってきたわけじゃありませんのよ!

と言い放つ(2巻p. 59)という、たいへんわかりやすいツンデレお嬢様系キャラです。ツンツンしつつもこよみをたいへん好いているあたりは百合っぽいと言えば百合っぽいのですが、惜しむらくは、同じ描き手さんによる『ピクシーゲイル』『マイナスりてらしー』ほどには女のコ同士のエロティシズムが感じられないこと。より正確に言うと、この作品でもっともレズビアン・エロティシズムの香りが漂うのが弓子とこよみの出会いのエピソード(あの顔の近さ! 頬に添えた手!)で、そこから先は尻すぼみだというところがちょっと残念でした。結局、弓子は百合とツンデレの狭間を器用にバランスしながら歩いているキャラであり、百合キャラと即断できるほどの決定的要因はないように思います。ヘテロだろうと非ヘテロだろうと、やたらとかわいい人であることには変わりないんですけどね。

こよみのヘテロ性について

こよみが美鎖の弟「総史郎」のことを気にかけているらしいという描写がごくごくううっすらとあり、このへんも非百合と言えば非百合な印象を受けます。とは言え、100メートルを22秒で走るというどんくさいこよみのことなので、そもそも自分の気持ちにも気づいていないフシがあり、男女恋愛要素は(も)ごくごく薄口なんですけど。

その他いろいろ

  • バイプレイヤーの嘉穂がキャラ立ちしていてとてもよかったです。ただの説明役かと思いきや、地味めの外見の下に隠れた聡明さや、独特の口調、温泉旅館の夕食でDr. ペッパー頼んじゃうマイペースさなど、魅力がいっぱいでした。
  • 呪文詠唱をプログラムコードにやらせるという発想が面白いし、0と1のコードが渦を巻いて魔法を発動させる場面の絵もかっこよかったです。
  • テンポの良いギャグもナイス。
  • たらいの謎が最後までひとつも解明されないところだけは理解不能。原作読めっていうことなのかもしれませんが、一応2巻には「完結編」と銘打たれているのですから、もう少し納得のいく終わり方にしてほしかったです。

まとめ

(微)百合話かどうかは読み手によって判断が分かれそう。個人的には弓子は百合というよりツンデレ寄りのキャラだと解釈しましたが、とりあえずこの人の言動見てると非常に楽しいので、この際もうどちらでも可とします。ちなみにコメディ作品としては、笑いもキャラ立ても絵も良質なものの、大きな謎がまったく解明されないまま終わってしまうところにもやもや。漫画として単体で読んでも面白いことは面白いのですが、基本的に原作またはアニメ版のファン向け作品なのかも、と感じました。