石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『2週間のアバンチュール』(中村明日美子、太田出版)感想

2週間のアバンチュール (Fx COMICS)

2週間のアバンチュール (Fx COMICS)

エロティックで残酷な物語

全3話の表題作が少女と少女のお話です。と言ってもラブストーリーではなく、ひらたく言えば「少女が少女を弄ぶ話」。南仏編・修道院編ともども、生々しいエロティシズムと残酷さに満ちており、読み出すと最後まで目が離せない奇妙な魅力があります。

ちなみに単に行為だけを取り沙汰するなら南仏編より修道院編の方が百合っぽいんですが、南仏編のレーズンのエピソードなども捨てがたいもんがあります。思うにあのレーズンの赤黒さが、「2週間のアバンチュール」全体を貫く微妙な欲望と嗜虐心の象徴になっているのではないかと。そう言えば主人公少女の名前が「アンジュ(天使)」なのも象徴的ですね。これは一種の皮肉あるいは反語なんだろうなあと思ったりしました。

なお、アンジュの子供らしい残酷さがもっともよく表れているのは、ローズやメアリ・ルーを嬲る場面ではなく、修道院編のラストシーンだと思います。厳密に言うと、これって実は大人にも子供にも、そして男にも女にもある残酷さだと思うんですが、それを少女という形をとってみごとに結晶させてみせたのがこの作品のすごいところ。ゾクゾクさせられつつもたいへん面白く読みました。

まとめ

毒とエロスの効いた幼いアバンチュールの物語。ちょっとエグい部分もあるので、いくらか読み手を選ぶかもしれませんが、あたしには面白かったです。