石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『お江戸とてシャン』(森島明子、芳文社)感想

お江戸とてシャン (まんがタイムコミックス)

お江戸とてシャン (まんがタイムコミックス)

百合メインではないけれど、鼻血が出そうな面白さ

純朴な町娘「おヒナ」といなせな火消し「虎吉」の恋を描く時代物4コマ。「メインではないけれど百合な部分あり」と聞いて購入してみたのですが、メインの部分も百合な部分も鼻血出そうな面白さでした。虎吉はじめ男性陣の色気がすごいし、百合キャラも魅力的だし、クライマックスの怒濤の展開もよかった! 

男性陣の色気がすごい

何がすごいって、まず背中。特に、虎吉の。筋肉のつき具合といい、絶妙なカーヴの描き方といい、なんですかあの造形美はー!! 見ているだけで脳内麻薬物質がじゅうじゅう出そうでした。森島明子さんって女体の色気を描かせたら天下一品だと思っていましたが、男性キャラの色っぽさもまた絶品ですね。あんな美しい背中にきりりと文身入れていなせに立っていられたら、そりゃ花のお江戸の娘っ子もコロコロ落ちるってもんです。

背中以外でも、肩とか! 鎖骨とか! 胸鎖乳突筋とか! のどぼとけとか! とにかく、いかにも男性らしいボディパーツがことごとくすさまじい色気を放っているところがすばらしかったです。虎吉が女性キャラとアップで並んで立っている大ゴマなどでは、女性キャラのうなじの柔らかいラインと、虎吉ののどぼとけのごつごつしたラインのそれぞれの美しさが響き合い増幅し合っていて、しみじみと見とれてしまいました。

メインの部分もよかったです

お話の本筋はおヒナと虎吉のヘテロ恋愛にあるのですが、単なるほのぼのラブストーリーでは終わらないメリハリがつけられていて、最後まで小気味よく読み進めることができました。特に山場の迫力ときたら、これが4コマ漫画であることを完全に忘れ切って手に汗握ってしまうほど。
さらに、物語に江戸時代の感覚や文化風俗がしっかり組み込まれているところもユニークでした。現代の発想をそのまま持ち込んでお話を紡ぐのではなく、当時の文化に寄り添う形で、いつの世も変わらない大切なものを描き出してくれる作品だと感じました。

百合キャラについて

途中まで「この人がそうなのかなあ、でもそれだと単なる娘さん同士の友情百合……?」などといぶかしみつつ読んでいたのですが、全然違いました。まさか、あの人がそうだとは! 大好きなキャラクタなので、なんだかとても嬉しかったです。女性から女性への恋愛感情が変に特別視されず、ごく当たり前にそこにある恋として扱われているところもよかった。また、意外な方向でカップルが成立するところも楽しかったです。

まとめ

起伏に富んだヘテロ恋愛部分だけでも十二分に面白いのに、百合な展開も非常に美味しくて、たいへんありがたい本でした。お話全体にたっぷりと漂う江戸テイストも楽しいです。カバー折り返しによると森島明子さんは「江戸文化歴史検定三級(現在二級取得のため勉強中)」とのことですが、またこういう時代物を描いてくださらないかなと思います。別に百合物じゃなくても、買いますよあたしゃ。