石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ラブフラッグ★Girls!!』(高橋依摘、一迅社)感想

ラブフラッグ★Girls!! (IDコミックス 百合姫コミックス)

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ゆるめの海賊百合漫画、ポイントはいちゃエロ

予備知識ゼロで買ったので、読んでびっくり。「百合で海賊」という新境地ですよ、これ。ただし設定やストーリーはかなりゆるめで、お話のポイントは海賊云々よりむしろいちゃエロにあります。で、そのいちゃエロこそが面白かったです。行為はリバ主体で愛にあふれ、前作『愛しをとめ〜君がこころは〜』に比べるとティーンズラブ色が抜けた感じ。結果として、より百合っぽさが増していると思います。全体を包み込む脱力系の笑いも楽しかったです。

あちこちゆるめな「ホラ話」的展開

この作品のあらすじは、「とある王国のお姫さま・ルーシアは、母が女海賊マリアに奪われた十字架を取り戻すため、海賊船にスパイとして乗り込む。ところが海賊船の女船長・エリアナと恋に落ちてしまい……」というもの。非常に特徴的なのが、

  • 王宮も海賊船も、というかあらゆる場所で女性キャラしか出てこない
  • つまり世界全体が女護ヶ島またはアマゾネスの国
  • しかも作品中でそれについて一言の説明もなし

という3点。これ、かえって面白いと思うんです。要するにこの作品は、20世紀的ながっちがちのリアリズムの手法をとらず、もっとおおらかな「ホラ話」を提供するものだと思うんですよ。そう思ってみると、エリアナのアホな性格や謎の体質、海賊ものなのに誰も死なないゆるゆるなストーリーなどもやはり一種のホラ話的な興趣をたたえており、こういう物語にいちいち細かく突っ込むのは野暮ってものだと思います。恋人とベッドの中で繰り広げるたわいもない「もしも話」を楽しむがごときスタンスでゆったりと空想の羽根を伸ばす、というのがこの作品の正しい読み方なんではないかと。

いちゃエロ部分について

前作にあった、「レイプされて汚れて云々」みたいなティーンズラブのノリは今回皆無。また、リバ主体のエロ描写では、愛撫される側のみならずする側の高揚もとらえられており、よかったです。セックスに対して変なテンパり具合がないところもいい感じ。エリアナとルーシアが入浴中、なしくずしに初めて身体の関係を持ってしまうところの会話のアホさ加減とか、すごく好きです。

他には、エリアナとルーシアの行為を目撃した乗組員たちの、

「いーなあ あたしもカノジョほしーなあ」
「じゃーみんなで船内恋愛しちゃう?」

なんていうのほほんとした反応(p. 96)もユニークでした。「同性同士は悩んで当然、隠れて当然」みたいな色眼鏡がまったくないんですよね。こののびのびした空気も、たいへんに魅力的でした。

まとめ

海賊ものでありながら「血湧き肉躍る海洋冒険譚」では決してなく、「ゆるくてアホな甘エロラブストーリー」といったスタンスの作品。でも、そこがかえってユニークで、楽しく読みました。恋人とのピロートークを楽しむがごとくまったりと構えて、あははうふふと読み進めるが吉。