石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『もっと! 委員長(3)』(内村かなめ、一迅社)感想

もっと! 委員長 (3) (IDコミックス)

もっと! 委員長 (3) (IDコミックス)

ヘンタイ(誉め言葉)の方向性が増え、新たな面白みが浮上

ドMな風紀委員長・松浦ちよを主人公とする学園百合ギャグ4コマ。1〜2巻ではギャグの主軸たるSMネタが微妙に滑っている印象を受けましたが、今回はSM以外のヘンタイネタも数多く織り込まれており、新たな面白さを獲得し得ていると思います。SMのとらえ方自体も、1巻あたりに比べてずいぶん幅が広くなっている感じ。また、カップリングが単一でないところも面白かったです。

3巻のSMネタについて

まず、「マゾヒストの快楽=身体的苦痛」という平板な構造から脱却しているところがよかったです。もちろん、ちよが単純にえみにどつかれてハァハァする場面なんてのも健在ではありますが、決してそれ「だけ」ではないところがポイント。たとえばp. 42の更衣室でのネタなど、体の苦痛の話ではぜんぜんないですよね。でも、しっかりSM。ギリギリな下着を身につけたちよの葛藤(p. 14)なんかも、かなりSM。さらにはちよが、メイド喫茶でバイト中の想い人・ゆかにかしずかれて

ああああああああああああああ いろいろさせてぇ――

と興奮しまくり、

ここはやばい空間だわ…いつも「してほしい」立場なのに「させたく」なってくる…

と我に返って述懐する場面(p. 77)などもあり、この価値観の転倒がもたらすあやういエロティシズムが非常に面白いと感じました。このように3巻では、ちよのマゾヒスティックな快楽というものがこれまでよりも多方面から描かれていて、楽しく読めました。

その他の悶々ネタについて

SMネタ以外でも、ほぼ全てのキャラの、甘酸っぱさといじらしさの入り混じったヘンタイっぷりがたまりません。好きな人の生着替えに興奮してみたり、いじましい自己暗示をかけてみたり、半ばストーカー化してみたりと、1冊まるまる欲求不満少女たちの悶々ネタが続き、そこがとても面白かったです。

あくまで主観論ですけど、百合4コマのエロスというと、エロ担当のキャラまたはカップルが固定され、「『エロい人(またはカップル)』と『そうでない私たち』」という切り分けが行われているものが多いような気がします。ところが、この『もっと! 委員長(3)』では、キャラが皆「変態ばっかの女子学生ばっか」(あとがきより)というすがすがしいまでの暴走っぷり。それでいて別にあざとくも下品にもならないんですよ。この独自路線は高く評価したいです。

カップリングも幅広し

基本的にはちよからゆかへの片想いが話の柱になっているのですが、ちよを好きなくまもゆかのことが気になっていたり、他にもゆかを慕う新キャラが登場したりで、3巻での恋模様はかなり錯綜気味です。そのあたりのドタバタ具合も、非常に楽しく読みました。ちなみにキャラの数が多すぎて今ひとつ誰が誰やら把握しづらいところは相変わらずですが、これはもう読み手の側が努力で乗り越えるしかないと割り切ったわたくしでした。努力して読むだけの価値が、この3巻にはあると思うんです。

まとめ

悶々少女たちの甘酸っぱいドタバタぶりや、これまでより多角的なSMネタなど、1〜2巻とはまた違ったはじけ具合がよかったです。4巻でもこのノリが続いてくれたら、とても嬉しいです。