石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ささめきこと(6)』(いけだたかし、メディアファクトリー)感想

ささめきこと 6 (MFコミックス)

ささめきこと 6 (MFコミックス)

うおおおおおおおお進展きたああああああ!!

長身空手少女「村雨純夏」と女のコ好きな女のコ「風間汐」の恋物語、第6巻。うおおおお進展きたあああああ!! 4〜5巻がまるで「回転数6000rpmで無理やりアイドリングを続けるオートバイ」のようなしんどい焦らされ具合だったため、「6巻もあのままだったら、あたしの頭のエンジンがマジ焼き付くのでは」と懸念していたんですよ実は。再び話がぐんと進んでくれて、本当に嬉しいです。そうは言っても、まだまだじれったい部分は山ほどあるのですが、今回はそのじれったさが「つらさ」だけでなく「甘酸っぱさ」としても機能しているところに注目。以前出てきたあのアイテムが再び使われているところも素晴らしかったです。いやー、堪能した。

じれったさと甘酸っぱさについて

恋が進展したとは言え、依然として苦しい部分やじれったい部分もてんこ盛りではあるんですよ。「その31 思いしものを」での風間の号泣と絶叫など、見ているこちらの胸まで引き裂かれそうです。ここの表現が、またすごいんだ。フキダシの中が、途中から文字じゃなくなるんですよ。もはや言葉にしている余裕すらない激情なわけですよ。そして、ややあって言葉を取り戻した風間がすがるように何度も繰り返すあのフレーズときたら。恋は非常に美しい病だ、とある作家が書いていますが、この一連のシークエンスでの風間のつらさは、まさにこの病に身を切り刻まれる痛みそのものだと思います。

でも今回は、つらいだけじゃないんです。

とあることがきっかけになって、主に風間の側が「守り」をやめていくんです。5巻では純夏と風間の両方がガッチガチの守りに入り、双方苦しんでいましたが、今回は途中から風間の側が1歩踏み出していきます。そこに、以前使われたとあるアイテムが、満を持して登場するんですよ。前回は「恋の痛み」の象徴だったアレが、今度はむずかゆくも甘酸っぱい「恋の幸福」の象徴となっているところが本当に心憎かったです。

痛みと癒しについて

裏表紙のシーネ(骨折の治療に使う固定具)と包帯は、この巻での「痛みと癒し」というテーマを暗示しているのではないかと感じました。「痛み」というのは、上の方で触れた風間の大絶叫ですね。「癒し」は、読んでのお楽しみ。pp. 62 - 63の見開き絵の場面が特にいいよ、とだけ言っておきます。

その他

  • 繊細な感情表現のうまさは今回も健在。まだ心にブレーキをかけている風間の、そのブレーキのかけ具合(ハグの場面に顕著)とかね。あと、純夏の微妙な変化に気づいたあの人の表情とか。さらにもうひとつ、p. 103での純夏の横顔とか。
  • 蓮賀朋絵の台詞が、4巻の表紙についてかつてレビューで書いたこととちょっと重なっているところも興味深かったです。
  • 同時収録の短編「番外編 そのEX」「神様とダンス」もそれぞれよかったです。どちらも独特の軽妙さと人間くささを合わせ持っているところが好き。

まとめ

苦しすぎるアイドリング状態から一転、ギアが入ってぐっと前進していく巻でした。あれ以上延々とすれ違い状態が続いていたら、「『君の名は』かこれはー!!」と暴れ出しそうなところだったので、大変ほっといたしました。とは言え、蓮賀さんの台詞が暗示している通り、まだまだ細かな行き違いや平行線が続きそうだとは思うんですよ。でも、それでもこの巻での進展はやはり重要だと思うんです。後半のあの切なく甘やかな展開だけで、もうしばらく頑張れるよあたし。というわけで、とても楽しめた1冊でした。超おすすめ。