石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ひだまりスケッチ(5)』(蒼樹うめ、芳文社)感想

ひだまりスケッチ (5) (まんがタイムKRコミックス)

ひだまりスケッチ (5) (まんがタイムKRコミックス)

今回のサブテーマは「家族」かなあと

ほっこり系の微百合4コマ、第5巻。相変わらず女のコ同士の友愛のあたたかさ・可愛らしさを丁寧に追っていく内容だと思います。4巻のサブテーマが「ゆのの成長」だとしたら、この5巻のそれは「家族」なんじゃないかと思いました。リアル家族の話も出てくれば、ひだまり荘の家族的なつながりも出てきますしね。百合ネタでは夏目さんがなかなかの健闘を見せており、百合4コマとして読むならこの人に注目です。間の取り方やギャグのうまさも相変わらずよかった。

サブテーマ「家族」について

5巻では修学旅行や里帰りなど、「ひだまり荘の住人が一旦ひだまり荘を離れる」というエピソードが複数登場します。その都度描かれるのが、今ここにいないひだまり荘メンバーを思いやる気持ち。おみやげ屋さんでついみんなの名前入りスプーンを探してみたり、ひだまり荘に電話をかけていつもの空気を味わってみたりと、皆さんやることが微笑ましいんですよ。

これは要するに一種のホームシックであって、彼女たちにとっては既にアパートのみんなが「家族」となっているんだなと思いました。端的に「お父さん・お母さん・お姉ちゃん(妹?)」という割り振りが出てくる箇所からもそのことがうかがえますし、共同生活から生まれるいかにも家族っぽい生活感もよかった。女のコたちを単にキャッキャさせるだけでなく、こういう切り口から彼女たちの密なつながりを描いていくというところが面白かったです。

百合方面について

もともと微百合な漫画ではありますが、今回は沙英やヒロが将来それぞれ男性と結婚する可能性も示唆されていたりして、恋愛色はさらに希薄になっています。いや、そうは言っても「沙英がツルッと殺し文句を口にする」とか「ゆのが宮子の乳にドキドキする」等のうっすら百合なエピソードがあることはあることはあり、そこも十分面白いんですよ。でも5巻では、このあたりのネタも前述の「家族」路線に回収されてしまいそうな雰囲気がぬぐい切れず、手放しで全部「百合だ!」ととらえるのもちょっと違う気がするんです。

そんな中、ひとり気を吐いているのが夏目さん。修学旅行がらみのエピソードが、特によかったです。4巻の短編「夏目ができるまで」と合わせて読むとなおさら趣深いと思います。百合漫画として5巻を読むのなら、このキャラに注目するとよろしいのではないかと。

間とギャグについて

抑制のきいた「間」のとり方が今回もすばらしかったです。特にp. 54「三年生」の最後のコマとか。ギャグもよかった。キャラが可愛いだけでなく、きちんと笑わせてくれる作品なんですよね。

まとめ

相変わらずみんな可愛いし、笑えるし、「家族」というテーマのあたたかさもとてもよかったです。でもその反面、もしも女のコたちの親密さが全部それで説明されてしまったら(今のところは『家族』『友愛』『百合』の間でバランスしている感じですが)ちょっともったいないかな、という気もします。そういう意味では、沙英に執着する夏目のじたばたぶりに、ちょっとほっとしたりしました。ガチ恋愛なんて全然描かれなくてもいいけど、今後もこうした百合っぽさを残しておいてくれたら嬉しいなと思います。