石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『大奥チャカポン!(1)』(まいたけ、アスキー・メディアワークス)感想

大奥チャカポン! 1 (電撃コミックス)

大奥チャカポン! 1 (電撃コミックス)

大奥が舞台のスラップスティックコメディ(百合あり)

「もしも日本が黒船以降も鎖国していたら」という仮定のもとに描かれる、一種のパラレルワールド大奥コメディ。めちゃくちゃ面白かったです。帯の「100回笑えるうつけ漫画」の文字に嘘はなく、小技のきいたギャグの連打に笑わされっぱなしでした。大奥ものでありながら誰もお世継ぎ懐妊に情熱を燃やさず、むしろ百合百合しい愛とバトルが展開されまくっているところがポイント。ホモフォビアのなさや、エロネタの上品さもよかったです。

百合百合しさについて

この漫画の百合ネタは、ほぼ「ガチエロなお姉さま」こと桜乃を中心に繰り広げられるのですが、何がいいってこの人が素で女のコ好きな人であること。さらに実は奥女中にモテまくりで、逢い引き(デート)しまくりであること。そして、おそらくは身体の関係も持っていること。にもかかわらず、あまりの変態ぶりから本命の杏には肘鉄をくらわされ続け、それでもめげないこと。さらに、杏も本心では桜乃のことが気になっていること。

つまりこれって、

  1. 「男がいないから女同士でイチャイチャしてみました」みたいな疑似恋愛でもなく、
  2. 滑稽な痴女役としての同性愛者/両性愛者を「まともな私たち」が嗤うという構図でもなく、
  3. 「百合はいいけど身体の関係は引く」みたいな線引きもなく、
  4. 本命カップルの間に愛があり、しかもそれが上質なギャグでコーティングされている

というお話なわけですよ。これはいいわー。あ、「世話係の先輩を『お姉さま』と呼ぶ」なんていう細かい設定も楽しかったです、ちなみに。

ギャグについて

まず、用語説明ギャグでお話のオチをつけるというスタイルが斬新。「21世紀の大奥」という設定の勝利ですね。達者な画力を生かして突然展開される他ジャンル漫画風のギャグとか、プロレス技とかもステキでした。他に個人的に好きなのは、

  • 「はじけとぶ襦袢!」
  • 「冗談じゃないっ つか何の隠語よそれ!!」
  • 祈祷(杏の)
  • 「あ……すごい 炎の鼓動を感じる――……」

など。

その他

  • エロネタに変なあざとさがないところが好印象。「ぶっかけ」なんていう単語が平気で出てくるわりに、画面はあくまで上品なんです。
  • これだけハチャメチャなギャグを展開しつつ、きちんきちんと伏線が張られているところもよかった。続きがとても楽しみです。

まとめ

これだけ笑える百合コメディは久々に見た気がします。絵もギャグも百合ネタもいいし、読後感も爽快。複数の伏線も気になって、今から2巻が待ちきれません。広くおすすめできる「うつけ漫画」です!