石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『紅蓮紀(3)』(武若丸、一迅社)感想

紅蓮紀 3 (IDコミックス 百合姫コミックス)

紅蓮紀 3 (IDコミックス 百合姫コミックス)

恋愛感情きたー!!

魔界の皇女「クレオ」とその“シェリヴィ”「蘇芳」の百合ファンタジー、第3巻。2巻までは正直「恋愛っぽさが希薄なまま、あざといエロ台詞がやたらと出てくる」というタイプのお話だったのですが、ついに爆発的な恋愛感情の奔流が来ましたよ! ああ、よかった。安心した。蘇芳の過去と絡めて語られるふたりの絆に違和感はなく、キスシーン(複数)や告白の濃厚さもよかったです。ちなみに物語は舞台を魔界に移し、これから本番といったところ。季鬼とうららもいつも通りいい感じでした。

キスシーンについて

第9話で計7ページを費やして描かれる熱いキスがまず素晴らしかったです。そして、それと同じぐらい、第10話でちらりと出てくる過去のキス場面がいいんですよ。このシーンだけで、クレオが蘇芳にあんなにこだわる理由もわかりますし、蘇芳が単なる「強引な攻めに押しまくられるだけのきゃるるん受け」なんかではないことが伝わってきます。これで今後はエロエロ展開も安心して見ていられそう。

いや別に、「愛がなければエロいことはしてはならん」とかそういうことを言いたいわけではないんですよ。愛とセックスは別物ですからね。実際、「ヘテロ女性同士で恋愛感情なしにセックスを楽しむ」というストーリーの漫画『この恋は×××』(山田可南、ぶんか社)を、あたしは高く評価したりしています。あたしが嫌なのは、要するにPCレズゲー『エンゲージ 〜お姉様と私〜』に顕著だったような、文脈無視のエロアピールです。前後の流れやキャラの心情の描写が不十分なまま、突然性的な絵づらや台詞を並べて「ほらほら百合ですよーエロですよー」とキャッキャされても困ります、ってことです。以上、念のため。

新展開について

10話から魔界編スタート。複数の新キャラも登場し、新たな展開への布石が打たれています。蘇芳の母「鴇」に何が起こったのかは相変わらず少しずつしか明かされていませんが、とりあえず今後の動きが楽しみです。今までのところ「突然現れた魔属に迫られる」「能力を使うとなぜか絶頂に達してしまう」「イヤボーンで真の力発動」等々、わりあい定番っぽい展開が多い作品なので、この先魔界編で何か目を見張るような新境地を見せてくれると嬉しいなと思います。

その他

巻末におまけ的に収録されている第6.5話が面白かったです。基本的にはドタバタエロコメなんですが、蘇芳の姉にこの後ふりかかる運命を思うとじわりと泣けたりもして、味わい深い感じ。メインカップルだけでなく、季鬼とうららの入浴シーンも、愛とおバカさのほどよい配分が楽しかったです。

まとめ

キスと告白ががっつり描かれ、一気にラブストーリーとして加速し始める巻でした。よかったよかった。魔界編での今後の展開に期待です。