石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『Girlish Sweetアタシノ彼女』(竹宮ジン、白泉社)感想

Girlish sweet―アタシノ彼女

Girlish sweet―アタシノ彼女

極上の百合物語。1食抜いても読むべき逸品

オムニバス形式で綴られる極上の百合物語です。基本的に学生ものですが、社会人キャラも登場します。こっれはいいわー。買ってよかった。読んでよかった。キャラクタの表情の力強さがまずすばらしいし、動と静のコントラストがくっきりした絵柄そのものにも強く惹かれました。そして何よりも、キュンキュン来るストーリーの深みが最高。可愛いなあ、ドキドキするなあと思いつつ読みすすめるうちに、意外なところでぐっと涙腺を刺激されるという展開にやられっぱなしでした。1食抜いても読むべき逸品です!

収録作について

「3/3 Memories」がイチオシです。自分自身が暴力と親和性の高い家庭出身だからということもあるのですが、読んでいる間じゅう何度もじわりじわりと泣かされました。虐待というテーマを「スキャンダラスなネタ」「悲劇の元」として消費するのではなく、その先に輝く希望をきちんと見せてくれるところがとても好き。このお話のオチが描き下ろし短編「Happiness」のオチと響き合って、この本全体のテーマをさりげなく示しているところもよかったです。

なお上記以外のお話も、キュートだわキュンキュン来るわでもう大変。時に応じて大人だったり乙女だったりするキャラたちの愛らしさといい、少ないページ数で絶妙の結末に着地する構成といい、少しずつ物語全体がリンクしていく楽しさといい、拍手ものです。ちなみに女性同士のカップルは複数あり、体の関係も登場します。特筆すべきは制服同士のキスシーン。あの詩のような美しさと色っぽさといったら! そんなわけで、漫画としても百合ものとしても大満足の1冊でした。

絵柄について

唐突に何を言うかと思われそうですが、ブランコを漕ぐとき、いちばん上のポイントで一瞬静止しますよね? あの「動いているのに止まっていて、止まっているのに動いている」という瞬間のぞくぞく感は、多くの人が知るところのものだと思います。

この『Girlish Sweetアタシノ彼女』の絵柄全体にも、同じぞくぞく感があると思うんです。要所要所でコマからコマへ、ページからページと移るときの、あの息を飲むような間のとりかたがすごい。一瞬の「動」を切り取って紙の上に落とし込むのが本当にうまい作家さんだと思います。ちなみにキャラクタの表情もとんでもなくいいんですが、これについては後述。

キャラクタの表情について

なんと言っても目の描き方が特徴的です。キリリとした目ヂカラ強めの目をベースに、とろけるような笑顔から静かな怒り、涙、驚き、そして初めての告白のドキドキまであざやかに描出していくテクニックに脳天が痺れっぱなしでした。「百合だからとりあえず終始フワフワさせとけ」みたいな阿呆な柔弱さがまったくない、くっきりした表情描写だと思います。まだ甘ったるいだけの百合が多いとお嘆きの貴兄/貴女に、超おすすめ。

まとめ

ため息の出るような傑作百合漫画集でございました。「こんなすごいものをこんなに安く(定価800円+税)買っちゃっていいのか」とカバー裏をまじまじと見つめてしまったほど。おすすめです!