石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『ピュア百合アンソロジー ひらり、Vol.1』(新書館)感想

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.1

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.1

  • 作者: 雨隠ギド,橋本みつる,スカーレットベリ子,前田とも,茉崎ミユキ,仙石寛子,遠田志帆,古張乃莉,藤沢誠,月村奎,御徒町鳩,TONO,未幡,石堂くるみ
  • 出版社/メーカー: 新書館
  • 発売日: 2010/04/24
  • メディア: コミック
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このアンソロは「買い」だ! 恋も友情も「女のコ」のありようもナイスな百合作品集

新書館から新創刊された百合アンソロです。この出版社はどちらかというとBLのイメージが強かったのですが、なかなかどうして百合もいけてますよ! 恋愛ものも友情ものも嫌味なく綺麗にまとまっていますし、百合云々以前にまず「女のコ」の描き方自体がおもしろい作品もあったりして、とても楽しく読みました。以下、特に印象的だった作品の感想など。

「影慕い」(前田とも)

毎朝同じ電車で学校に通う女子高生ふたりの恋愛もの。タイトルや途中の台詞から、よくある悲恋萌えとか、「同性愛は日陰の存在」みたいなノリだったらどうしようという懸念もないではなかったんですよ。けれども、繊細な表情とよく練られた会話にぐいぐいと物語の中に引きずり込まれ、気がつくと圧倒的なエンディングに「やられたあああ」と唸っている自分がいました。このアンソロ全体の中で、この作品がいちばんよかったです。「影」というモチーフの使い方といい、大胆な最終ページといい、惚れた。すごすぎる。単行本はまだか。

「一瞬のアステリズム」(雨隠ギド)

柔らかな絵柄で描かれる三角関係ストーリー。ちなみにふたりでひとりを取り合うというお話ではなく、「AはBが好き、BはCが好き、CはAが好き」というパターンの三角関係です。まず各キャラの、好きな人を見てメロメロになってるところの表情がたまりません。切なさや甘さや含羞がないまぜになった、見ているこちらまでとろけてしまいそうないい表情をするんですよ、みんな。それぞれが相手のどんなところを好きなのかもひしひしと伝わってきますし(特にソフトボールの場面の鮮やかさがステキ)、意外性のあるオチもよかったです。

「ピンク・ラッシュ」(TONO)

ふたりのアイドル「サナ」と「マール」のお話。と言ってもこのふたりのラブストーリーというわけではなく、コミカルな筆致で「ヘテロ女子と非ヘテロ(?)女子の感覚の違いの一例」を描いていく作品です。で、これが面白いんだ。ヘテロ女子の中には「可愛い女のコを見るとムカツク」「ライバル心がわき上がってしまって楽しくない」という人がいて、よくわかんないなと常々思っていたんですが、なるほど、こういうことだったんですね。百合/同性愛要素はごくかすかに暗示されるのみにとどまっていますが、女のコの実態をユーモラスに描いた漫画としてとても楽しく読みました。ちょっとレトロ風な絵柄もよかったです。

その他いろいろ

爽やかな友情もの「SMILE MAKER」(スカーレットベリ子)、フォークテイル風のオチがぐっとくる「この街に人魚はいない」(未幡)、つらい日々に疲れた人の胸をゆさぶる「原田さんと美咲ちゃん」(石堂くるみ)などもよかったです。

とは言え、他の収録作には正直表情が単調すぎたり(あらゆるページでひたすら顔を赤らめてるとか)、コマ割りがごちゃごちゃしていたり、バストアップばかりで絵的に退屈なものもないではないのは事実。でも、あたしにとっては圧倒的に「よかった作品の数>残念な作品の数」という図が成り立っているアンソロです。ちなみに同性愛嫌悪的な作品はゼロだとあたしは思います。

まとめ

このアンソロは「買い」です。前田ともさんの「影慕い」をはじめ、おすすめしたい作品がぎっしりです。質的に残念な作品も少しだけあるものの、1冊を通じてホモフォビアはまったくないし、全体としては超お買い得。Vol.2もとても楽しみです。