石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『純愛くろにくる』(江戸屋ぽち、コアマガジン)感想

純愛くろにくる (ホットミルクコミックス 321)純愛くろにくる (ホットミルクコミックス 321)

コアマガジン 2010-05-10
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乙女視点の18禁エロ漫画(百合あり)

『純愛かたろぐ』に続く、江戸屋ぽちさんの2冊目のエロ短編集です。10編のうち、描き下ろし作品「君色モノクローム」が百合作品。女のコ同士のHシーンは定型的ですが、その前後の甘酸っぱい恋模様が非常にキュートで、楽しく読みました。特に、オチのほっこりしたラブラブ感は必見。その他の収録作も、女のコ側の視点を大切にした作品が多く、安心して読むことができました。ちなみにヘテロ物では、漁師の十造さんが活躍する「Heart of 漁師」が最高。ラブラブ和姦好きな方におすすめの1冊です。

「君色モノクローム」について

女子高生「藍」と「沙織」のラブストーリー。セックスになだれこむ過程がいささか唐突ですし、セックス自体も、シスヘテロ男性向けの百合エロにありがちなパターンを踏襲しているところがあたしには合いませんでした。けれども、それを上回るぐらい、ふたりの恋心の機微がすごくいいんですよ。全18ページのうち、前半9ページをすべて使って主人公の揺れる心を追っていくという丁寧さがまずナイス。そして、そこで張られた伏線を綺麗に回収する結末もまたすばらしかったです。特に最後のコマの、キュートでほっこりした雰囲気がたまりません。キャラの表情もよかった(あの下がり眉とか!)し、全体としては大満足の1編でした。

ちなみにこの『純愛くろにくる』、百合ものがあるかどうかの事前情報がゼロの状態で予約購入してあったんですよ。そしたら作品解説に、

前回の単行本でも巻末に百合ものを描いたのですが、わざわざその12ページのために購入をしてくださったという方もいらっしゃってとても嬉しい反面、大変申し訳ないような気持ちに……
しかしながら好きなのでやっぱり今回も描いてしまいました

とあって(p.196 )びっくり。12ページどころか2ページのためにだって買うし、百合ものが載ってるかどうかわからなくたって「もしや」の一念で買いますよ。というわけで次の単行本にも是非百合を入れてくださいコアマガジンさん。

漁師の十造さんについて

収録作「Heart of 漁師」は、不器用でまっすぐなおっさん漁師「十造さん」への愛がまぶしいステキ作品。前作『純愛かたろぐ』でも「うどん好きなおっさん」を熱く描いてみせた江戸屋ぽちさんですが、今度はヒゲの漁師のおっさんが大活躍ですよ。たまりませんよ。ぽちさんのエロ作品の何が好きって、こういうコミカルな変化球がビシバシ決まるところですね。

その他いろいろ

  • ヘテロ作品でも百合作品でも、女性の側の好き感情や欲望が丁寧に描かれているところが好印象でした。
  • 表紙に顕著ですが、巨乳傾向に拍車がかかっている感じです。このへんは好き好きかも。
  • 前作もそうでしたが、男性器の描き方が特徴的ですね。作者さんのこだわりなんでしょうか。

まとめ

優しくてラブラブなエロ漫画集でした。百合作品「君色モノクローム」の甘酸っぱさと、あたたかなオチがよかったです。ヘテロ作品では漁師の十造さんが白眉。どぎついエロをお求めの方には向かない1冊ですが、コミカルで可愛いめのエロ漫画がツボな方にはおすすめです。