石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『キミ恋リミット』(百乃モト、一迅社)感想

キミ恋リミット (IDコミックス)

キミ恋リミット (IDコミックス)

セックスありの三角関係もの。オチにもやもや感あり

「園」、「里深(さとみ)」、「紘子」の3人が織りなす三角関係ストーリー。端正な絵が魅力的です。当たり前のように身体の関係が出てくるところも好印象。ただ、オチにちょっともやもやしてしまいました。あるキャラの気持ちの変化に説得力が薄いし、別のとあるキャラも「つなぎとして使い捨てられるレズビアン」そのものに見えてしまって心が痛いです。主人公も単なるいいとこ取りの二股女に見えてしまい、あまり共感できない感じ。あと、レズビアンバーの描き方にも一部疑問を覚えました。まったくの誤解でああ描いているのか、わかっていてあえてあんな描写にしたのかは謎ですが、あれを読んだ人が「ビアンバーってこういうところなんだ」と曲解したらすごく嫌。

絵はすごく綺麗です

頭身の高い整った絵柄で、表情もたいへん魅力的でした。セックスシーンも綺麗でよかったです。乳首の描き方とか、可愛いかった。

しかしオチが納得いかん

※以下、ネタバレありです。

まず里深の気持ちの変化が急激すぎる気がします。よく見ると表情などでごくうっすらと伏線が張られていなくもないのですが、それでもなお、第8話での彼女の台詞に、あたしは説得力を感じませんでした。人って、告白されて、「その先が怖くていつも見て見ないフリ」をしている相手をわざわざ自分の部屋に住まわせたり、その人の前で下着姿でうろうろしたりするものでしょうかね。p.52最下段のコマの台詞も素で言っているように見えるだけに、なんだか納得いかない感じでした。

紘子については、なんだかもう気の毒で見てられません、この人。結局、園にいいように利用されてるだけなんですもん。もう少し紘子にも救いのあるような幕の引き方だったらよかったのにと思います。たとえば映画『四角い恋愛関係』の、ヘックの扱いみたいに。カバー下のおまけ漫画に一応の救いがあることはあるのですが、できれば本編の中で彼女を救済してやってほしかったです。

最後に主人公・園について。里深に対して一途と言えば聞こえはいいんですが、結局この人のやっているのはものすごく無責任なことなのでは。試しにこのキャラが男性だったらと想像してみるとよくわかると思います。園の行動って、こんなですよ?

  1. 現カノの家に無職で転がり込むも、昔好きだった女に未練たらたら。セックス中にその女の名前を叫んで放り出される
  2. その後、昔好きだった女に偶然出会い、ちゃっかりと家に住みつく
  3. 熱を出して倒れ、現カノ宅で介抱される。にもかかわらず飛び起きて「○○ちゃん(昔好きだった女)の手料理っ!!! 帰んないとっ ○○ちゃん待ってる!!」と絶叫
  4. そして本当に帰る
  5. しかしまた現カノ宅に戻ってくる
  6. その後、無言で失踪

これが男なら、こんな人とつきあいたがるのはよほどのだめんず好きだけでしょう。そして、男女間で失礼なことは、女女間だってやっぱり失礼です。というわけで、あたしにとっては最後まで共感しづらいキャラクタでした。

レズビアンバーの描き方について

内装やお客さんの感じなどは、現実のレズビアンバーに近いと思うんです。そこはよかったんですが、第6話の展開、ありゃ何ですか。一見さんの横にレズビアンが座って太ももをまさぐるって、まるで松本清張ドラマ『指』(感想はこちら)なみの珍描写だと思うんですが。客として来ていたレズビアンが冗談でそうした、と取って取れなくはない描写なのですが、読んで誤解する人も出てきそうで、ちょっとひっかかりました。

あと、これもまた「もしも男女の話だったら」と考えるとわかりやすいんですが、この場面の流れ自体がなんか古いと思うんです。ヘテロ話に置き換えるとこの場面は、「里深をノンケバーに連れて行った紘子が、そこにたむろする男たちに『興味あんだってさー』『みっちり教えてあげてよ』と言い放つ」の図に。で、男にまさぐられて嫌悪感をあらわにする里深のネンネ(死語)ぶりを冷笑するという構図なわけですよ。そのクサさが面白いという見方もあるかもしれませんが、あたしにはあまり合わない感じでした。

まとめ

美しい絵柄はとてもよかったし、女同士だからと言って身体の関係をいちいち特別視しないところも好印象。レズビアンやレズビアンバーなどが当たり前のように登場するところも嬉しかったです。でも、オチのつけ方がメインカップルにだけ都合が良すぎて、あたしにはしっくり来ませんでした。レズビアンバーでの謎のキャバクラごっこもいらん誤解を招きそうで、釈然としません。総合すると、「面白いんだけど、あと一歩」な作品でした。