石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『バージン・ロープ』(速野悠二、秋田書店)感想

バージン・ロープ (チャンピオンREDコミックス)

バージン・ロープ (チャンピオンREDコミックス)

緊縛系学園エロコメ。エロエロながら百合な心情はこまやか

特別な縄で妖怪を捕縛する「緊縛の巫女」こと「天野叉絵夢(あまのさえむ)」が活躍するドタバタ学園エロコメ。カバー見返しの「ナワとオッパイの読み切りが単行本にまでなりました」という説明そのままのエロエロな作品ながら、意外にも女のコ同士の愛がまともに扱われているところが面白かったです。身体だけ絡ませて終わりとかじゃなくて、心情面の描写が非常に細やかなんですよ。また、日本古来の妖怪や民話などがうまくお話に組み込まれているところも面白いと思いました。18禁でないのが不思議なほどドエロなシークエンスの連続なのに、グロさや陰惨さがなく、むしろカラリとした雰囲気があるところもよかったです。

エロ要素について

タイトル通りに毎回緊縛が登場するのみならず、アナルプレイ・触手・(疑似)浣腸プレイ・ふたなり・妊婦プレイなど、「どこの18禁作品ですか」とツッコミたくなるような場面がてんこもりです。あ、ちなみにこれらのほとんどが♀♀エロです。でも、ここまでHシーンが詰め込まれているにもかかわらず、いっそ不思議なほどあざとさやエグさは感じられず、むしろ爽やかだったりするんですよ。これは多分、女のコたちを単に「ヤラれて屈服して終わり」の存在にはしないという基本方針によるものではないかと思います。この作品には「いやよいやよも好きのうち」的なご都合主義は存在せず、意に反する性的行為の後には必ず反撃のカタルシスが用意されているんです。キャラにはっきりと、

どんな行為でも押しつければ暴力と同じだ

と言わせている場面(p.78)もあり、非常に面白いと感じました。作中に触手エロがあろうとレイプ目が描かれようと、それだけで性的な搾取・暴力を肯定する漫画になどなりはしないという好例だと思います。

百合な部分について

エロコメとしてのみならず、百合漫画としてもいけるんですよこの作品。それがもっとも顕著なのが第5話「バージン・ビーンズ」。お話のメインとなる百合カプの、クライマックスでのやりとりが泣かせます。2人を見守る叉絵夢とその師匠の会話もよかったし、ギャグもいい味出してました。ストーリーの枠組みそのものは「百合ん百合んなカップルが料理中に生クリームまみれでエロいことに」というよくあるパターンなのに、そこにここまで新しい風を吹き込めるものかと感動しました。

妖怪ネタのうまさについて

河童や海坊主、小豆洗いなど、日本古来の妖怪の生かし方が面白いなと。これらのキャラがきちんとエロスと笑いの要になっているところが、特によかったです。

まとめ

単なるエロエロアピールだけのオカズ漫画かと思いきや、フタを開けたら全然違ってました。露出度こそ一般誌の限界ギリギリながら、変な女性蔑視が全然ないし、エロと笑いのバランス加減もよかったです。百合カプの愛情のとらえ方も、コミカルな中にもぐっとくるものがあり、堪能しました。さっくり読める百合なエロコメとして、非常におすすめ。