石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『会長と副会長』(袴田めら、一迅社)感想

会長と副会長 (IDコミックス 百合姫コミックス)

会長と副会長 (IDコミックス 百合姫コミックス)

熱をはらんで加速するラブストーリー

マイペースな生徒会長と生真面目な副会長の、女のコ同士の恋物語。序盤の微笑ましいやりとりだけでも楽しいのに、中盤以降でエロスと熱を加えて一気に加速していくストーリーがまたたまりません。「両想いになって性行為までたどりつけば即ハッピー」みたいなステレオタイプをあえてぶち壊し、より繊細に恋の痛みと歓喜を描き出す力作だと思います。奥行きと動きが増した絵柄もいいし、脇キャラをただの狂言回しに終わらせない配慮も心憎かったです。

第4話から一気に加速

序盤を読んだ段階では、てっきりエロ無しリリカル路線のお話だと思ったんですよ。キャラの可愛さや心情描写のこまやかさに胸打たれ、きっとこのまま切なくプラトニックな恋模様が描かれていくのであろう、と迂闊にも思い込んでしまいました。ええ、わたくしが完全に間違っておりました。

とにかく第4話! の、p. 49! あのけしからんエロさと言ったらもう……! 不意打ちだっただけに余計に破壊力大で、鼻血で失血死するかと思いました。その後のp. 51〜54の一連の流れにも、当然目が釘付け。

思えば、女性から女性への欲望をさりげなく肯定してみせるというのは袴田めら作品の大きな特色。この漫画でも、その作風が手堅く生かされているということになりましょう。
会長と副会長の初セックスの場面もよかったです。欲情をたたえた会長の表情といい、

こんな愉悦を知ってしまって 拒否できるわけない

という副会長の独白(p. 98)といい、うまいなあもう。いわゆる18禁エロ漫画的な露骨な性描写はほとんどないというのに、したたるような官能にノックアウトされまくりました。

ステレオタイプを越えた恋

「両想いになる→セックスする→それだけで無敵の絆形成」みたいな嘘くささがないところが面白かったです。実際この作品は、セックスするまでではなく、してからがむしろ話の本番となっています。大好きな人と身体を重ねる幸福や高揚もきちんと描きつつ、それを恋愛関係の万能薬にしてしまわないところが好印象でした。

その他いろいろ

  • もともとの絵柄の可愛らしさはそのままに、絵の奥行きと躍動感がさらに増している気がします。
  • 書記・桃井の意外ないじらしさがよかったです。そんな桃井にメロンパンを与える会計さんも。この2人を柱に据えたスピンオフ作品とか出ないかしら。

まとめ

プラトニックなすれ違いものかと思わせておいて、まったく違った方向に突き進んで行く傑作。エロスも毒も、キャラたちの内面描写のこまやかさも、とてもよかったです。おすすめ。