石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『バーバ・ヤガー(2)』(きづきあきら+サトウナンキ、メディアファクトリー)感想

バーバ・ヤガー 2 (MFコミックス アライブシリーズ)

バーバ・ヤガー 2 (MFコミックス アライブシリーズ)

謎と嘘が絡み合うサイコ愛憎劇

4年前のキャンプで起きた失踪事件をめぐるダークな愛憎劇、第2巻。今回も死と血とエロスに満ちた陰惨な展開で、たいへん楽しく読みました。百合、というか同性愛要素も、相当痛々しくはありますが面白かったです。謎と嘘が絡み合うストーリーラインも上質で、ミステリでもあり猟奇・ホラー要素もありという点から、なんとなくミネット・ウォルターズを連想したりました。

今回も陰惨です

死ぬ人が1人、そして血を流す人はもっとたくさんと、相変わらずの恐ろしい内容です。でも、本当に恐いのは、この不気味な展開に圧倒的なまでのリアリティがあること。1巻もそうでしたが、「山姥」というモチーフを用いて人間のグロテスクさを容赦なくえぐり出していく作品だと思います。その痛いほどの容赦のなさが、逆に小気味よかったです。

百合部分について

犬丸から溝呂木への特異な執着も極まれりといった展開があります。そこまでの前フリがうまいんだ、また。溝呂木と松田の微妙な距離、お風呂での溝呂木の表情、犬丸の大きな目に浮かぶ涙等々、メタランゲージによる誘導がすべてこの場面へとつながっており、異様な展開にもかかわらず思わず納得させられてしまいました。1巻を読んだ時点では、犬丸の溝呂木への想いを百合と呼んだものかどうか迷っていたあたしですが、ここに至って「これは百合である」と確信。病んでるし痛々しいしとことんバカではあるんですが、この感情はあたしにとっては「百合」の範疇に含まれるんです。

絡み合う謎と嘘

1巻でも1話ごとにお話の視点が切り替わっていましたが、今回もアッコ→犬丸→溝呂木→光岡の順で視点が変わるという群像劇的な構成になっています。主人公が替わるごとに事実の断片が少しずつ明かされ、謎が解ける快感と、新たに浮上する謎とが読者を翻弄。ホラー・サスペンスとしてのみならずミステリとしても楽しめる、濃厚で上質なお話だと思います。

まとめ

1巻を読んだ時点では「これ、百合レビューに入れちゃっていいんだろうか」と悩みもしましたが、ここに至って「入れちゃっていい。当然」と確信。百合メインの物語ではないにせよ、この巻でのあの強烈な展開は見過ごせませんよ、やはり。それ以外でも、グロテスクな部分も謎解き部分も読み応え十分で、買って損なしの1冊でした。1巻と合わせて、おすすめ。