石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『GIRL FRIENDS(5)』(森永みるく、双葉社)感想

GIRL FRIENDS(5) (アクションコミックス)

GIRL FRIENDS(5) (アクションコミックス)

文句なしの最終巻。今までありがとう!

女子高生同士のキュートな初恋物語、ついに最終巻。すばらしかったです。予想通り、この巻ではまりとあっこの体の関係も含めた恋愛模様が描かれていきます。そこでセックスが「目指すべきゴール」でも「魔法の万能薬」でもなく、もっと身近でいとおしいこととして位置づけられているところが非常によかったです。行為そのものの描写も繊細で、いかにも女のコ同士な雰囲気でした。また、女子同士で付き合っていく大変さと幸福を、大上段に構えずさらりと綴っていくところにも唸らされました。地に足がついた、それでいて愛も夢もしっかりある、大変よく練られた百合物語だと思います。

Hシーンについて

これはもうほんとによくできてると思います。

私たちは ただ
好きな人と素肌で
触れ合うことの
幸せと気持ちよさで
いっぱいだった。

というモノローグ(p. 128)そのままの、初々しくて、同時に幸福と高揚に満ちたよいセックスシーンでした。いかにも女のコ同士らしい皮膚感覚がきちんとおさえられているところに感涙。「快楽=体のパーツの摩擦」とか「女をイカせるにはテクニックが云々」みたいなおバカなヘテロポルノの文脈とはまったく違う、みずみずしい性愛描写だと思います。

物語の中でのセックスの位置づけもユニークでした。「セックスしました☆これで私たちの仲は永遠☆」みたいな頭悪そうな、あるいはエロゲ的な流れがまったくないんですよ。セックスはとても大事だし気持ちいいことだけれど、それ「だけ」で魔法のようにバラ色の未来が開けてくるわけじゃないという視点がちゃんとあり、地に足ついてるなあと嬉しく思いました。

女同士の大変さと幸せについて

これについては、まず第29話に注目。デートしていても「カップル」とはみなされない寂しさを描いた上で、あっこの発言でそれが綺麗にひっくり返されていくところの鮮やかさと言ったら。女性同士の関係をひたすら可哀想がってみせるでも、浮世離れしたお花畑として美化するでもなく、メリットデメリットの両方をおさえた上でやわらかく肯定していくという切り口に拍手。あと、こちらは最終話に顕著ですが、まりとあっこの関係を、ひいては女子同士の関係そのものを特別視せず、どこにでもある「人が誰かを愛すること」の一環として扱っているところも嬉しかったです。

その他いろいろ

  • いつもの女子高生女子高生した雰囲気も健在。メイクとかネイルとかプリクラとかお買い物とか、いかにもな感じで楽しかったです。
  • 担任の先生「なるちゃん」を使って大人の視線を入れているところがうまいなと思いました。いつもならすぎさんの役回りですが、それをあえて本物の大人にやらせることで、物語の厚みがさらに増していると思います。

まとめ

丁寧に紡がれた、極上の最終巻です。エロゲ的ご都合主義にも現実逃避のお花畑にも陥らず、ましてや「おかわいそうなマイノリティ」路線にもならず、最後まできめ細かく女子同士の恋を追ってみせた良作だと思います。2人の初めての行為も、それにともなう幸せと気持ちよさも、女のコ同士らしい感覚にあふれていてよかったです。おすすめ。