石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『スーパー乙女大戦』(森奈津子、徳間書店)感想

スーパー乙女大戦

スーパー乙女大戦

触手+SF+女性同士のセックスで綴る官能コメディ

巨大怪獣から地球を守るため、性の快感で巨大ロボットを操ることとなった女子高生7人の物語。SFとSMとレズビアン・セックスと、さらに日本の誇るHentai表現・触手プレイを詰め込んだ、にぎやかな官能コメディです。何が面白いって、怪獣のデザインやら何やらに注文をつけまくるSFオタク・冬子と、「学園のカサノヴァ」なはずがどんどんお笑い担当と化していくレズタチ・真琴の両キャラ。女だらけのエロコメながら、レズビアニズム以外のさまざまな性のありようも等価に扱われているところもよかったです。とは言え、メインキャラが7人もいるせいか、キャラ同士の相関関係がわかりづらい部分もあるのはちょっと残念。あと、当然ながらSFや触手が苦手な方には向かないので、そこだけ注意。

冬子について

冬子は聖アンナ女学院高等部SF・ファンタジー研の会長。地味目のオタクキャラですが、実はこの人こそが本作の背骨を支えているのではないかと。地球の危機だというのにまず怪獣のデザインに目が行き、

成田亨をあの世から召喚しろとは言わないけど、もうちょっと、才能あるデザイナーを用意してほしいんだよね。どうせ地球を襲うのなら」

とぼやく(p. 137)わ、バトルで戦闘機が叩き落とされると、

「ああーっ! F-2戦闘機、いくらすると思ってるんだ! パイロット一人養成するのに、いくらかかると思ってるんだ!」

と叫ぶ(p. 27)わで、オタクのアレなところ満載の人ではあるんですよ。でも、結果的にこの観察眼と知識とが乙女たちを救うというところが、同じオタクのひとりとして実に痛快でした。コメディリリーフでありつつ実は有能な解説・探偵役でもあるという、味わい深いキャラだと思います。

真琴について

真琴は聖アンナ女学院でモテモテの通称「学園のカサノヴァ」。ボーイッシュなレズビアンキャラであり、第1話を読んだ時点では、このお話は真琴と優等生キャラ・美祈子のラブコメになるのかと一瞬誤解したんですよ。ええ、一瞬だけ。実際には回が進むごとに真琴の愛すべきおバカさがどんどんクローズアップされ、さらに美祈子の隠れた才能(性的な)が開花していくため、お話はまったく予想もつかない方向に突っ走っていきます。この転がるラグビーボールのような先の読めなさと、いちレズビアンの駄目駄目っぷりを容赦なく暴き出す筆さばきとがたいへん面白かったです。

性表現について

地球を守る女性型有機ロボット・スーパーガイアのエネルギー源は、乙女たちの性の快感。というわけで毎回必ずHシーンが登場します。ここでユニークなのは、セックスだけでなく自慰も多々描かれること。また、全員がご都合主義的にレズビアニズムに目覚めたりはせず、バイセクシュアルもいればAセクシュアル(ノンセクシュアル?)もサディストもマゾヒストもいて、さらにSM要素や触手萌えも満載と、性のありようがたいへん多彩であること。モノガミーすら別に当然視されないという風通しのよさが、とても楽しかったです。ちなみに女性同士の行為そのものは、“濡れた洞窟と後方の蕾を同時に犯しながらクリトリスを刺激する”系のパターンが多めで、ディルドも登場します。ご参考まで。

なお触手については、冬子の言うところの「なんだかよくわからないグニョグニョした下等な生物の触手に、膣やアヌスのみならず口の中にまで侵入されてしまう」場面がてんこもりです。男性向けファンタジーの陵辱シーンとはまた違った切り口で、女性側の悦楽としての触手エロが追求されているところが新鮮でした。特にかれんの触手にかける情熱がナイス。「触手姉妹」という発想もナイス。

難を言うと

あたしのお粗末な頭では、7人ものメインキャラたちの相関関係がなかなか把握しづらかったです。レビューを書くにあたって全体を3回通りほど読んだのですが、あの人とあの人がプラトニック・ラブに落ちる場面など、「なぜ今ここで?」といまだ腑に落ちない感じ。柔らかそうなキスシーンそのものは、萌えなんですけどね。そんなわけで、乙女戦士の数をもう少し絞った方がわかりやすさが増したかもしれない、と思います。

まとめ

明るい百合エロがツボで、『ウルトラファイト』(円谷プロの往年の特撮テレビ番組)や触手に愛がある人なら必読の一冊。ていうかいっそこれを下敷きにした触手エロゲ/アニメ/漫画を作って海外に輸出してくれないものかと思います。世界中のTokusatsu(特撮)/Tentacles(触手)/Yuri(百合)オタが「日本がまたやってくれた」と涙を流して喜ぶと思うんですけど、駄目かしら。ただし、SF・触手属性がない方には合わないかもですし、キャラとキャラとのかかわりが今ひとつつかみにくい点があるのも事実。直球でわかりやすい百合エロコメという点では、同作者さんの先輩と私『先輩と私』(徳間書店)の方に軍配が上がると思います。