石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『渚のハイQ部(2)』(胡せんり、一迅社)感想

渚のハイQ部 (2)  (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

渚のハイQ部 (2)  (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

百合漫画として堂々の完結

離島のビーチバレー部が舞台の百合4コマ、完結編。1巻とはうってかわって恋模様の軸が定まり、時に切なく時にくすぐったい百合ドラマが丁寧に繰り広げられていきます。最初からこれをやってくれればよかったのに! 百合漫画の帯に「キス? 女の子同士だし別にいいじゃん?」などという大味な台詞を持ってくる神経だけは解せませんが、作中にはこうした「女のコ同士の関係=軽視していいもの」という価値観を鮮やかにひっくり返していくくだりがあり、楽しく読めました。脇キャラの切ない心情も味わい深く、特に亨(とおる、♀)の意外にヘビーな過去話など、見ごたえありです。

恋愛の軸が明確化

1巻の主な難点は、

  • 序盤が迷走気味であること
  • 主人公・あきら(♀)が駄目なハーレムゲーの鈍感主人公にしか見えないところ

だったと思います。駄目なハーレムゲーというか、『アオイシロ』の小山内梢子を連想させさえする鈍さ・薄っぺらさだったと思うわ、あれは。しかしこの2巻では、あきらと珠樹のカップリングがよりクローズアップされ、あきらの人間味も増して、へっぽこエロゲ風味は雲散霧消。メインカップル以外の心情描写にも力が注がれ、甘酸っぱい百合四角関係としてじゅうぶん楽しめるものとなっています。本当に、最初からこれをやってくれればよかったのに!

帯に騙されてはいけません

よりによって百合漫画の帯で「女同士はノーカウント」的価値観をアピールしてどうすんのよ、と思ったんですよ最初は。ヘテヘテであるばかりか「女は性の主体になれない」というミソジニーまで漂ってるわよ、この帯。しかし、漫画本編そのものはこれとはまったく異なる方向に進んでいくもので、安心して読むことができました。あきらが帯の通りの台詞を口にする場面があることはあるんですよ、一応。でも、当のあきらがその後、女のコ同士のキスが自分にとってどんなに大切なものだったかに気づいて悶々とするくだりが、それはそれはみっちりと描かれているんです。恋心の自覚とともに、「女同士はノーカウント」説が180度ひっくり返され、そこから怒濤の告白劇につながっていくという流れがみごとでした。

千代と亨もよかったです

千代はテンプレ鼻血キャラを卒業し、笑えて泣ける役どころをうまくつとめています。メガネの中の目を敢えて描かないあのコマ(p. 104)とか、ぐっときました。さらによかったのが亨で、恋の痛みや切なさにかけてはメインカップルを食うほどの大活躍だったと思います。あの指人形にこめられた過去といい、珠樹とのあれこれといい、名場面がぎっしりです。ただのイロモノキャラでは終わらない大化けっぷりで、堪能いたしました。

まとめ

1巻とはうってかわって焦点がはっきりし、面白みも飛躍的に増していると思います。これなら良質の四角関係百合としておすすめできるかと。これから読まれる方には、1冊ずつではなく、必ずこの2巻まで通して読まれるようおすすめしておきます。