石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.3』(新書館)感想

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.3

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.3

  • 作者: 袴田めら,藤こよみ,TONO,橋本みつる,スカーレット・ベリ子,未幡,藤沢誠,石堂くるみ,大沢あまね,栗城偲,夏乃あゆみ,ふかさくえみ,藤生,犬丸,仙石寛子,桑田乃梨子,ささだあすか,前田とも,遠田志帆,竹美家らら,鈴木有布子
  • 出版社/メーカー: 新書館
  • 発売日: 2010/12/25
  • メディア: コミック
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安定した質を誇る思春期百合アンソロ

基本的にカプは10代学生同士・行為はキスどまりという無難路線ながらも、安定した質を誇る1冊でした。特によかったのは表情がすばらしい「かわいいひと」(前田とも)、巧みな構成の「購買のプロキオン」(ふかさくえみ)、オチがぐっとくる「図書室の姫ちゃん」(大沢あまね)、さりげないエロスが美しい「白、またはピンク」(仙石寛子)など。ちなみに基本的にキスどまりの作品がほとんどとは言え、女のコから女のコへの欲望を肯定する漫画もあれば、脇の百合カプのセックス(愛撫?)場面が登場する漫画もあったりします。従って妙な純潔志向はないと言ってよく、そのあたりも好印象でした。

よかった作品いろいろ

1. 「かわいいひと」(前田とも)

人形のように可愛らしい「結」と、そのボーイッシュな幼なじみ「恵」の物語。気持ちがすれ違う中で結がどのような行動に出るかは、実はかなり早い段階で読めてしまうんですよ。にもかかわらず、クライマックスからエンディングにかけて、予想をはるかに上回る感動がズガンと襲ってきます。あのp. 137の結の表情と、そこにかぶさっていく恵のナレーションときたら! そして、ラストページの余韻ときたら! ショートカット美少女が好きな人におすすめの作品です。

2. 「購買のプロキオン」(ふかさくえみ)

購買部で働く正体不明の美少女に恋をした生徒会長の物語。途中からぐいぐいと意外な展開を見せてくれるストーリーが楽しかったです。「この人はなぜこの人を好きになったのか」の説明がユーモラスで、ラブくて、しかも説得力ゆたかなんですよ。興味をひきつけるタイトルといい、「冷凍くし団子」のような言葉のチョイスの面白さといい、隙のない作品だなあと思います。

3. 「図書室の姫ちゃん」(大沢あまね)

百合な女子高生「木嶋」さんと、図書室の地縛霊「姫ちゃん」の交流をつづる4コマ漫画。嫌味のないエロギャグの数々もさることながら、オチの叙情がまたたまらんです。さんざん笑わせて油断させといて、いきなりこう来るとは!

4. 「白、またはピンク」(仙石寛子)

時代は昭和初期でしょうか。それとも明治・大正でしょうか。ふたりの和装少女の、さりげない日常の百合シーンをとらえた作品です。『三日月の蜜』(芳文社)もよかったけど、この作品もよかった! あのあえかなエロティシズムは、まさしく百合の醍醐味だと思います。

その他

袴田めらさんが初登場ということでずいぶん期待したのですが、台詞による説明が多めなところがちょっと残念でした。ビッグネームということで勝手に満塁ホームランを期待してしまったこちらが悪いのかも。

まとめ

今回も面白かったです。Vol.1あたりではまだ技術的に疑問が残る(表情が単調、コマ割りがごちゃごちゃなど)作品が多かったのに、巻を追うにつれてどんどんクオリティが上がってきていると思います。百合の先駆者『コミック百合姫』と、独自の路線を切り開く『つぼみ』は、これをどう迎え撃つのでしょう。2011年の百合漫画シーンも熱くなりそうで、今から楽しみです。