石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『執事少女とお嬢様(2)』(真田一輝、芳文社)感想

執事少女とお嬢様 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

執事少女とお嬢様 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

1巻よりは百合寄り。ただし、ぬるめ。

お嬢様の「沙綺」と、その男装執事「ひなた」の物語。これで完結です。1巻よりも男装萌え要素が薄まり、その分百合寄りの内容になっています。ただし、ありきたりな展開も多い上、メインカップルはあくまで友情と恋愛の境目ぐらいの関係をキープ。百合漫画として読むなら、脇キャラの切ない心情や、キス直前まで行くあの人とあの人に注目しておいた方が面白く読めるかもしれません。とは言え、それでもやはり、どの関係にもはっきり恋愛とまでは言い切れないぬるさは残るんですけどね。男性キャラの顔がマネキンか蝋細工にしか見えないところも気になりました。

このへんが百合寄り

1巻で「女同士ならノーカン」とか平気で言ってたわりには、かなり好き好き度がupした内容になっています。特に沙綺の側については、複数のエピソードを使ってじっくりと心境の変化が追われており、面白かったです。ただし、ひなたがなぜ沙綺を好きなのかはよくわからないまま。1巻で言ってた通り「好きになる」努力をしたからなんでしょうか。でも努力で好きになるのって、友情でもましてや百合でもないのでは。それって「大嫌いなピーマンが、努力で食べられるようになりました」とかそういうクラスタの出来事では。それで萌えるのはあたしにはちょっと難しいため、エンディングにも今ひとつノレませんでした。残念。

このへんがありきたり

「密室に閉じ込められてしまう2人」というお約束シチュが2度も出てくる上に、終盤の展開も既視感ありまくり。つか、他ならぬ百合ジャンルで『プリティ・タフ』が90年代に既にやってるまとめ方です。ストーリーをひねるヒマがあったら萌えを追うという姿勢はいっそ潔いとも言えますが、読んでいて物足りなさを感じてしまうのも事実。

注目するならこのあたり

まず、ひなたの親友・麻衣がよかったです。遠回しの告白(ですよねアレは?)と、その後ぽそりとつぶやく

…そっちかぁ

の一言(p. 17)、そして何も気づかない鈍感ひなたというあの一連の流れが切ないったらありゃしません。また、密着したりキス寸前まで行ったりする某カップルも要注目。多少の妄想補完こそ必要ですが、このできあがってる感がメインカプより百合百合しいと思うんですよこの人たち。

その他

女性キャラの顔はすべて今どきの萌え絵なのに、男性キャラはマネキンか蝋人形のような不気味なリアル顔というところに戸惑いました。男性キャラだけアシさんが描かれたんでしょうか。萌えなら萌え、リアルならリアルで全体のトーンを揃えてほしかったです。

まとめ

1巻が男装少女萌え漫画だとしたら、この2巻は「友情以上恋愛未満」萌え漫画かなと。最後まではっきりした恋愛色は打ち出されないため、ひなたと沙綺のラブストーリーとして読むのはちと難しいと思います。ひなたの好き感情の正体がはっきりしない点やストーリーのペラさ、男女のキャラデザのちぐはぐ具合なども気になるところ。ちなみに1〜2巻を今通読してみた感想を一言で言うなら、「荒削り」ですね。ひなたに眠るサディズムなど、もうちょっと生かす手もあったんじゃないかなあ。次回作に期待。