石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『妄想HONEY』(三国ハヂメ、一迅社)感想

妄想HONEY (IDコミックス 百合姫コミックス)

妄想HONEY (IDコミックス 百合姫コミックス)

ライトでえっちな学園ラブコメ

アホの子主人公「ののか」、ののかの幼なじみ「奏」、美人で変人な先輩「望」などが織りなす学園ラブコメ。タイトル通り「妄想」をキーワードにちょっぴりえっちな三角関係が繰り広げられるという内容で、楽しく読みました。ほとんどのキャラが無駄にエロくて(誉め言葉)ニヤニヤさせられますし、唯一シリアス系のキャラクタ・奏の見せ場もよかったです。サブキャラたちも魅力的。ちなみに雑誌連載作ということもあってか、携帯配信された『極上ドロップス』より直接的なエロ度は控えめです。

「ののか」の妄想について

望の色香に翻弄されまくるののかの妄想がそこらじゅうで繰り広げられてていて、面白かったです。女のコのエロ妄想をここまで肯定的に描くという点が画期的だなあと思いました。
百合って、「女性は性欲を抱いてはいけない」という規範と、「百合には性的要素を持ち込むべきでない」という規範とに二重に縛られがちなジャンルだと思うんですよ。そこでこれだけの妄想キャラを主人公に据えて、女のコから女のコへの欲望をさらりと肯定してみせるというのはすごいことだと思います。

奏の見せ場について

唯一のシリアスキャラである奏は、ひとことで言えば「耐える役回り」。望とのいちゃいちゃに浮かれるののかの姿を横目で見ながら耐えて耐えて、それから第3話のとある見せ場を迎えることになります。
ここの奏がいいんですよ。嘆きのドラマ・クイーンになるでも、既成事実でなしくずしに籠絡を試みるでもなく、もっと淡々と自分のつらさに向き合っていて。官能をきちんと描きつつ、「女なんてやってしまえばこっちのもの」みたいなアホな価値観には迎合しないという名場面だったと思います。

エロ全般について

無駄にエロいキャラ満載で、楽しいったらありゃしません。妄想少女な主人公も、無自覚に色気を振りまく望も、交流校でいちゃつく百合カプさんたちも、皆微笑ましくもエロティックでした。特に好きなのは交流校の生徒会長・高嶋さんかな。あのさりげないテクニックはぜひ見習いたいと思います。

冒頭でも少し触れましたが、女のコ同士の直接的なセックスシーンは控えめなんですよこの作品。しかしながら、首の付け根に近づく唇(p. 36)や、さりげなくほどかれるセーラー服のリボン(p. 59)といった描写がこれでもかといわんばかりの百合な官能をたたえており、まったく不足は感じませんでした。あけすけなエロだけがエロではないと改めて学ばせていただいた心境です。

サブキャラについて

「ハリセン」こと澄子やメガネの生徒会長・想など、脇の皆さんのキャラ立てがくっきりはっきりしていて面白かったです。特に想は、アングロサクソンの地味美少年のような風貌といい、真面目一本槍かと思わせておいて意外に大胆なところ(pp. 111 - 112)といい、ユニークさが際立っていたと思います。

まとめ

『極上ドロップス』が濃厚な生クリームだとすると、こちらは砂糖多めのミルクティーといった按配でしょうか。直接的な行為こそ控えめでも、柔らかそうなキスやハグや、それになんと言ってもののかの妄想が甘やかなエロスを添えていて、楽しく読みました。サブキャラの配置が手堅いところ、女のコから女のコへの性欲を明るく肯定しているところ、それでいて愛情と快楽とをごっちゃにしないところなども好印象。さっくり読めてちょいエロな百合ラブコメをお探しの方におすすめです。