石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『Happy Accidents』(Jane Lynch、Voice)感想

Happy Accidents

Happy Accidents

『Glee』のスー先生役で一躍人気になったレズビアン女優・ジェーン・リンチの自叙伝です。役柄のイメージとはまた違う繊細でキュートな内面が伝わってくる、面白い1冊でした。自分の弱さや欠点を包み隠さず書いた上で、そこからの成長の「旅」をユーモラスに書いていくというスタイルが好印象。同じ有名人の自叙伝でもクイーン・ラティファの『Put on Your Crown: Life-Changing Moments on the Path to Queendom』はただの自慢の羅列にしか見えなかったんですが、この本はまったく違います。

特に面白かったエピソードはこのあたり。

  • 14歳のとき、女優になりたくてシカゴ中のありとあらゆるタレントエージェントに手紙を書いたが、どこからも反応はなかった。6ヶ月後、ユニバーサルスタジオからようやく手紙が来た。内容は『経験のない奴はイラネ』(要約)というもので、しかもジェーンの名前の綴りが間違っていた。が、ジェーンは「ユニバーサルのレターヘッドがついてる!」というだけで舞い上がり、その手紙を大切にスクラップした。今でもとってある。
  • 異性装が好きで、小さい頃はこっそりパパのスーツやネクタイを身につけて遊んでいた。だから『Lの世界』で、自分用に仕立てられた「50歳の成功した男性弁護士が着るような」スーツを着たときは本当にわくわくした。
  • これまで演じた役は、医師や弁護士など権威ある役柄が多い。本人はヘタレで小心者なのにどうしてこういう役ばっかり来るのだろうと思っている。
  • どれぐらい小心者かというと、初めて自分で脚本を書いた『Oh Sister, My Sister』の初日前夜にキンコーズでパンフレットを作っていて、恐怖と緊張のあまりおしっこを漏らしたぐらい。
  • 2010年のゴールデングローブ賞にノミネートされたときには、スターでぎっしりのテーブルの間を歩くのが怖くて、発表時に「ジェーン・リンチって言わないで、ジェーンリンチって言わないで、ジェーン・リンチって言わないで」と一生懸命祈っていた。
  • なぜか、元々は男性用の役として書かれたキャラクターを演じることが多い。たとえば『40歳の童貞男』の店長役など。
  • 股下が約89センチあり、合う服を探すのにいつも苦労する。
  • その昔TV通販タレントの仕事をしたとき、プロデューサーはもっとフェミニンでかわいらしいタイプと替えたがっていた。が、後釜候補のギャルたちがアホすぎたのでなかなか替えられず、ジェーンは楽しく仕事を続けた。
  • 家族にゲイバレするのが怖くて自分に殻を作っていたが、孤独でつらかった。セラピストに「出さなくてもいいから手紙を書きなさい」とすすめられ、書いてみた。結局その手紙を出してカミングアウトしたところ、「ジェーンが何か隠している、ひょっとして病気では?」と心配していた家族たちは「なんだ、そうだったのか!」とむしろ大喜び。以後、良好な関係が続いている。
  • オリビア・ニュートン・ジョンの大ファンで、ペットの犬の名前も「オリビア」。
  • マダム・タッソーの蝋人形館でスー・シルベスターの蝋人形を見たとき、「自分そっくりの蝋人形の隣に立つほど奇妙なことってあるのかしら」と思った。数分後「ある」と思った。ジェーンは、蝋人形館のスタッフが、スー先生の蝋人形の胴体と頭をバラバラにして運ぶところを目撃したのだった。

他にも楽しい箇所はたくさんあり、『逃亡者』『ドッグ・ショウ!』『ぼくたちの奉仕活動』『Lの世界』『Glee』など、出演作についてのエピソードも豊富。クロゼット時代のつらさや孤独感、特に少女時代の苦悩が胸を打つところもいいです。少し古風な単語をユーモラスに織り交ぜてみせる文体は読みやすく、ちょこちょこ読みで1週間ぐらいで読了できました。オーディオブックも出ているようなので、買ってみようと思っています。