石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『2ガールズ』感想

キュートで甘酸っぱい初恋物語

ステレオタイプを脱した良質の初恋物語であり、よくできたコメディーでもあります。レズビアンならずとも、自らの初恋を思い出してにやりとさせられそうな一品です。超おすすめ。

こんなところがよかった

アフリカ系のイーヴィーがアッパーミドルクラス出身のお金持ちで、白人のランディはワーキングクラスのレズビアン家庭出身だってあたりからして、もう、「紋切り型の話にはしません」っていう宣言よね。ランディがのっけから人妻とつきあってたりするのも、「時代錯誤な女子校悶々ストーリーじゃないですよ」ってことだし、登場人物の誰ひとりとして「女性が女性とつきあうこと」自体にアレルギー反応を起こしていないのも「古くっさい『レズの悲劇』映画じゃありません」ってことだし。何もかも新鮮で、可愛くて、かつリアル。そうなのよ、これが現代よ!

何もかもフレッシュな「現代アメリカの初恋」をコミカルに描いていく中で、ホイットマンの『草の葉』を持ち出してみせるあたりがまたうまいです。単にイーヴィーがランディを受け入れたことをほのめかす小道具かと思いきや、この詩集はクライマックスでとても大切な役割を果たします。これがまた、甘くて、神聖で、でもちょっと馬鹿馬鹿しくて、ほろ苦いシーンになってるんです。恋をしたことがある人ならみんな、この甘さとほろ苦さがわかるはず。

ラストシーンもよかった。思春期女子同士の初恋っていうのは、あれが一種のハッピーエンディングとなるものだからです。「相思相愛なら何でもうまく行く」みたいな無責任で古臭いオチにされたんじゃ、そこまでのリアル感もテンポのよい展開も、すべてが台無しになってしまう。潔くきっぱりと幕を引いて見せて、その直後にあの献辞を出すあたり、初恋ってものの描き方が本当にうまいなと思いました。

ステレオタイプに陥っていないわけ

この映画が従来のレズビアン映画みたいな偏見まみれのステレオタイプ(レズビアンが社会病質者だったり、殺人犯だったり、色情狂だったり、やたらと暗く思い詰めたり)に陥っていないのは、監督のマリア・マッゲンティ自身がレズビアンであるからかもしれません。そもそもこのお話自体が、マッゲンティの実際の体験(本人によると"What a comedy it was!"だとか)に基づいているんだそうで、そりゃ、きちんと地に足がついた話になるのも当然だわ。

さらにいうとこれはレズビアンのスタッフがほとんど手弁当で寄ってたかってつくったインディペンデント映画でもあるから、メジャー資本が喜びそうな次代錯誤の「レズの悲劇」路線になんてなりようがないのよね。こういう映画がもっと増えてくれると嬉しいなあ。

まとめ

「もう暗いレズ話にはうんざりよ!」と思ってる方に特におすすめの、可愛くてちょっと切ない初恋物語です。コミカルなシーンの連続と、新鮮な果物をかじったみたいに甘酸っぱいストーリーをぜひ堪能してください。