石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

男子刑務所に19ヶ月間収容されたトランス女性、釈放さる

The scales of justice
The scales of justice / James Cridland

殺人罪で懲役41ヶ月の刑を宣告され、男子刑務所に入れられてしまったトランスジェンダー女性シーシー・マクドナルド(CeCe McDonald)さんが、19ヶ月の収容ののち釈放されました。

詳細は以下。

After 19 Months In Men's Prison, CeCe McDonald Released

マクドナルドさんはアフリカ系アメリカ人のトランス女性です。彼女が2011年の6月、友だちと一緒にミネアポリスの「Schooners Bar」というバーの前を歩いていたところ、バーの中から走り出てきたディーン・シュミッツ氏(47歳)たちに人種差別的かつトランスフォビックな罵り言葉を投げかけられたのが事件の始まりでした。攻撃は言葉だけにとどまらず、マクドナルドさんはシュミッツ氏のガールフレンドにガラス瓶で顔を殴りつけられたとのこと。それで喧嘩となり、最終的にマクドナルドさんがバッグの中から引っ張り出した裁ちばさみでシュミッツ氏の胸を刺すことに。シュミッツ氏は、その場で亡くなりました。

以下Violence Against (Trans)Women Today | Support CeCe!から、マクドナルドさん本人の説明を引用します。

オカマ野郎からクロンボまでありとあらゆることを言われたあと、怒りはエスカレートし、わたしは狂気のうちにつかまえられてしまいました。他のグループの女性はアルコール入りのカクテルをわたしの顔にかけようと決め、怪我させる上に侮辱もできるようにと、わたしの顔にガラス製のカップを叩きつけてきました。頬が引き裂かれ、切り口は唾液腺まで届くほど深かったため、12針縫った後で疼痛をともなう合併症が引き起こされました。現場にやってきた警察にとっては、誰が加害者なのか推定するのは難しいことではありませんでした。そう、警察から見ればもちろん、この騒ぎは全部黒人の若者グループが始めたものと決まっていたのです。

After being called everything from faggots to niggers, tempers escalated and I was caught in between the madness. A woman from the other group decided to throw her alcoholic cocktail in my face, and to add insult to injury, she smashed her glass cup in my face which lacerated my cheek and was deep enough to cut a saliva gland which caused painful complications later on after getting 12 stitches. When the police arrived it wasn’t hard to for them to assume who the aggressors were–surely, for them, it had to have been the group of black kids who started all this drama.

つまりこの事件、トランスフォビアとレイシズムが二重に絡んでいるわけ。それが殺人罪で有罪となり、しかも男子刑務所に入れられてしまったものだから、「これはヘイトクライムに対する正当防衛なのに」と抗議が巻き起こっていたんです。特に、トランスジェンダーの人気女優でアクティヴィストのラヴァーン・コックス(Laverne Cox)は、マクドナルドさんの釈放を求めて尽力し、『Free CeCe』というドキュメンタリー作成にも着手したほど。

釈放後さっそく会ったふたりの様子はこちら。奥がラヴァーン・コックスで、手前がマクドナルドさんね。

ちなみに19ヶ月で出て来られたのは、司法取引の結果なのだそうです。41ヶ月まるまる収容されずに済んだのはまだよかったけれど、だとしてもひどい話ですよね、これ。ガラスで顔面殴られて、唾液腺まで傷つくほどざっくりやられて、そこで反撃するなって言う方が無理でしょ。ガラス片が動脈を切ってたら、死んでたかもしれないのに。おまけに自分のジェンダーとは違う刑務所に入れられるだなんて、刑期の長さとはまた別の苦痛を味わわされるわけで、二重にむちゃくちゃだよ。「人を殺したんだから刑務所に入って当然」とか、そんな単純な話じゃ絶対ないと思うのよ、ほんと。