石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ツインケイク』(青井はな、一迅社)感想

ツインケイク (IDコミックス 百合姫コミックス)

ツインケイク (IDコミックス 百合姫コミックス)

台詞ばかりでアクションなし、キャラの魅力もなし

憧れのアイドル・鈴蘭のマネージャーとして奮闘する楓が、やがて鈴蘭と恋仲になるお話。キャラが終始受け身で人物像が漠然としており、ストーリーは説明台詞の力でかろうじて進んで行くだけです。百合云々以前に、フィクション作品として力がなさすぎ。

リアクションばかりの楓さん

楓が鈴蘭の所属しているプロダクションに入ったのは、偶然道でスカウトされたから。自分から行動を起こしたわけではありません。鈴蘭のマネージャーになったのも、事務所の人に言われたから。自分から何かしたわけではありません。マネージャーから付き人(兼パシリ)になったのも、鈴蘭から言われたから。自分で働きかけたわけではありません。ファーストキスの場となる旅館に泊まったのも、事務所の人から「はいこれ」とチケットを渡されたから。自分からは何もしてません。

つまりこの人、行動が基本的に「リアクションだけ」なんですよ。自分からは何もしてない。回転寿司のように都合よく目の前に現れる事柄に、ただとりとめなく反応しているだけ。そんな主人公のどこにどう共感しろと。

ものすごく数少ない、楓が自分から起こした行動も、なんだかちぐはぐだったりします。好きなはずの鈴蘭を、会った直後にいきなり脅迫してみたりとか。眠っている鈴蘭に、同意もないのに一方的にキスしてみたりとか。そもそも事務所の先輩であるはずの鈴蘭を最初から呼び捨てにしているあたりも変。総合すると、恋に落ちた百合キャラというより、自己中モラハラ野郎かレイピストにしか見えません。行動こそがキャラクタの本質を表すものなのに、その貴重な行動がこうまで主人公の株を下げまくってるって、どういうこった。

説明台詞でやっとこ話が進行

これはないわ、と思ったのが、楓が鈴蘭への恋心に気づくシーン(pp. 74-75)。

もうひとつ解ったことがある
わたし
鈴蘭が好きなんだ―…

いやいやいやいやここまで1冊の半分もページを使っておいて、なぜそれを台詞(モノローグ)でペラペラ説明させるんですかと。なぜ表情や行動でやらせないんですかと。ていうか、鈴蘭のマネージャーになりたい一心で脅迫までした時点では好きじゃなかったんですかと。

ここ以外でもキャラの心情はひたすら文字で説明されるばかりで、説得力が感じられませんでした。身体面でも感情面でもキャラの動きが鈍い分、説明台詞に頼る以外にストーリーの進めようがなかったのだろうとは思いますが、仮にも商業作品でこれはないわ。

Hシーンは一応あるのですが

セックスシーンは複数出てきますが、ヤッてりゃ百合になるというものでもないので、特に何の感慨もわきませんでした。

まとめ

受け身なだけで人物像のわかりにくいキャラがモノローグで「私の気持ち説明会」をおっ始め、なぜか都合良く恋が成就するという、いかんともしがたい百合作品でした。「久しぶりに面妖なものを見た」というのが偽らざる感想です。