石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ラブフェロモンNo.5(2)』(岩崎つばさ、双葉社)感想

ラブフェロモンNo.5(2) (アクションコミックス)

ラブフェロモンNo.5(2) (アクションコミックス)

ラブラブバカップル4コマ、これにて完結。

常軌を逸した匂いフェチ・かをりとその彼女・香菜のラブラブバカップル4コマ、最終巻。一部の展開に強引さはあるものの、イベントや新キャラをうまく使って、結末まで無事お話が引っ張られています。1巻と違いトランスフォビアは見受けられませんでした。かをりと香菜のラブラブ度や、メリハリのきいた絵柄は相変わらずナイス。百合として読むなら、実はメインカップルより生徒会長から角田への想いの方がダシがきいてて楽しいかも。

展開について

上で書いた「展開の強引さ」というのは、香菜が学園祭ネタの後半で突然「距離を置いたほうがいい」とかをりから離れようとする部分のこと。このキャラがここでそう言い出す理由がさっぱり伝わって来ず、単にドタバタを盛り上げるために便宜上そう言わされているとしか受け取れませんでした。混乱した香菜が生徒会長に相談をもちかける場面で、いみじくも角田が、

飯田さんがわからないこと 私がわかるわけないよ

と発言している(p. 55)のはなんだか皮肉です。キャラ(たち)ですらよくわかってないことが、読者にわかってたまるか。この無理のある展開が長期化せず、新キャラ・味蕾の投入で話が別方向に動き出したときにはほっとしました。メインカップルの愛自体は、(上記の意味不明のすれ違い部分を除けば)今回も熱く激しく密着度も高く、よかったです。

脇キャラについて

1巻であれだけトランスフォビアを浴びていた流々が、今回はむしろ「カッコいい」(p. 116)部分全開で肯定的に描かれていることにひと安心。あと、生徒会長から角田への百合恋愛には、下手をするとメインカップルの恋より味わい深いものがあると感じました。かをりと香菜のわかりやすいラブラブっぷりもそれはそれでいいんですが、ままならぬ恋をままならぬまま楽しんでいるフシのある生徒会長の姿には、ひとひねりした通好みのよさがあると思います。

まとめ

ストーリーラインに一部ぐらつきはあるものの、全体としてはパワフルで明るい百合コメディとしてきれいに収束しています。エロなし(キスどまり)のバカップル百合4コマを気楽に読みたい方におすすめ。