石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『Faking It』1×01 "Pilot"感想

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IMG_5917 - Brienz - Peanut butter! / thisisbossi

米MTVのコメディ。学校で目立とうとレズビアンカップルを装った親友同士、カーマとエイミーが高校一の人気者になってしまい、引くに引けなくなるというお話。実はエイミーは自覚がない同性愛者でカーマに片想い中、という甘酸っぱい設定がたまりません。

第1話のトレイラーはこちら。


Premiere Trailer | Faking It | Season 1 | MTV - YouTube

これ実は、放映前には「オフェンシヴだ」という批判もけっこうあったドラマなんですよ。レズビアンのふりをして人気取りだなんて、ヘテロによるアイデンティティー搾取じゃないかという意見も見かけました。しかし、ドラマ自体を観ればすぐわかることですが、これは搾取なんかじゃないです。オフェンシヴでもないです。だって、女同士のバディ物としても、ティーンエイジ・レズビアンの片想い物としても、そして皮肉のきいたコメディとしてもすんごくよくできてるんですから!

特にうますぎて唸ったのは、カーマとエイミーがお互いのことをどんなに大事に思っているかを、細かなエピソードの積み上げで見せて行くくだり。カーマが長年ピーナツバターを食べずに我慢していた理由とか、エイミーがカーマの誕生日のたびにカーマにしてあげたこととか、あのあたりね。こういうちょっとした友情エピソードに加え、「あたしはあんたが2年生でシモの毛が生えたのを誰にも言わなかったぐらい最高の親友なのよ!」なんてコミカルな台詞が飛び出すところも必見。ふたりが仲直りする屋上の場面も、感動的であると同時に笑いの要素が盛り込まれていて、楽しく鑑賞しました。「〇〇ちゃんはあたしの大切な親友……!」みたいな説明台詞をキャラに適当に喋らせるだけで終わっちゃう日本のへっぽこ百合は、こういうのを見習うといいんじゃないの。

ふたりが上記のようにお互いをとても大切に思っているからこそ、エイミーちゃんの片想いが余計に切なくなってくるという構図がまたよかった。エイミーについては、まずあの衣装を選んだスタッフさんに最大限の拍手を贈りたいです。あのセンスはどこからどう見てもレズビアン。そう、カミングアウトする前からバレバレだったエレン・ペイジと同じぐらいレズビアン。「クロゼットに閉じこもっていて、自分のセクシュアリティに気づいていない」という状態を暗示する戦略として完璧です。さらに、エイミー役のリタ・ヴォルクの表情がまたうまいの。特に、シリーズタイトルが含まれているこの台詞の直後の表情。

「もしレズビアンのふりをしているのなら、こんなことする?」

"If we're faking it, would I do this?

「こんなこと」が何を指しているのかは、見てのお楽しみ。この場面こそが第1話のヤマです。

もうひとつこの作品で興味深いのは、同性愛に対してものすごく「寛容」な高校という設定。ふたりが通う学校は同性愛者のみならずエスニック・マイノリティも、妊娠した生徒も、障害のある生徒もあたたかく受け入れられている、すごーくリベラルなところなんですが……リベラルすぎなの。レズビアンだと表明しただけでめちゃめちゃ支援されたり、好かれたり、人気者になったりというのは、実は対等に扱ってもらえていないということでもあるんですね。要するにこれは大昔の差別や蔑視の裏返しであって、本当の意味ではまだ平等じゃないわけ。そのへんをちらりと皮肉っているところが、とてもよかったです。いや、そうは言ってもやっぱり、ゲイキャラのショーンくんが、ホモフォビックなキャラの台詞を聞きつけ、

ゲイいじめか。誰か90年代後半臭い人がいるわね!

Bullying the gays. Someone reeks of the late 90's.

と言ってのけるところとかは痛快すぎるんですけどね。この台詞、憶えておいていつか使いたいわー。

ショーンくんで思い出したんですが、このドラマ、脇役のキャラ立てもすごくいいですよ。長くなるので今回は割愛しますが、ショーンはもちろんカーマとエイミーの親たちや、カーマの血の繋がらない妹・ローレンなど、それぞれ何を求めてどんな風に行動する人なのかがきわめて明確。しかもそれが笑いを生みだし、コメディとしてのこの番組のおもしろさを支えてる。プロの仕事っていうのは、こういうものよね。

最後に、タイトルについて。あたしの目から見ると、『Faking It』(直訳すると『ふりをする』)というこのタイトルそのものが感慨深いです。なんとなれば、これまでゲイやレズビアンの生徒は、人気者になるためには一生懸命ストレートのふりをしなければならなかったから。それが今では、人気者になるためにレズビアンのふりをする(もちろん、フィクションとして誇張されている部分も大いにあるんですが)だなんて、なんという逆転現象かと。このコインの裏表のような、差別の反動としてのちやほやを取り上げ、現代的かつキュートなコメディにしてみせたというところがこのドラマの最大のポイントですね。第2話も楽しみ。