石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『Faking It』1×04 "Know Thy Selfie"感想

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米MTVの高校生レズビアン・コメディ、第4話。エイミーは自らの恋心をはっきり悟り、レズビアンが集うお店に行ったり、出会いアプリを使ったりして自分のセクシュアリティと格闘。カーマはリアムと揉めてます。相変わらずショーンの活躍がよかった。

トレイラーはこちら。


faking it season 1 episode 4 sneak peek - YouTube

親友カーマとともにレズビアンカップルのふりをして一躍ハイスクールの人気者になったエイミーですが、今回の彼女はまず冒頭あたりでショーンとこんな会話をしてます。

ショーン「もしみんなにフェイクだってばれたらリンチされるよ」
エイミー「わたしのはフェイクじゃない、それが問題なの」

ついに自分が実はレズビアンで、カーマに片想いをしていると認めたわけですよ! しかしそこから一筋縄ではいかないのがこのドラマ。「本当の彼女ができれば、偽の彼女(カーマ)は親友に戻れる」という理屈で、エイミーはショーンの手ほどきのもと、新たな彼女探しに乗り出すのでした。

そこで訪ねたレズビアンの集まるコーヒーショップでのシーンが最高。

エイミー「こんなにたくさんの野生のレズビアンを見たのは初めて」

とか、

ショーン「お好みは何味? リップスティック、スポーティー、クリステン・スチュワートのグルーピー、それとも古典的なブッチ?」

とか、うまい台詞がぎっしりだし(特に『お好みは~』の部分は映像もすばらしすぎます)、エイミー役のリタ・ヴォルクの怪演がまたいいんです。目の合ったレズビアンを誘惑しようとがんばる彼女の姿は、どう見てもただの変人。しまいにショーンに「みだらでアグレッシヴなのはゲイ男性には有効だけど、レズビアンは違うから。レズビアンが求めるのは絆と愛の巣、みんな恋に落ちて解き放たれたいのよ」と説教される始末。なぜ、レズビアンがゲイからレズビアン恋愛指南を受けているのか!? というねじれ具合がおかしすぎる名シーンです。

ちなみにその後ショーンがエイミーに教えるレズビアン用出会いアプリの名前まで傑作なの。"SYZZR"(シザー)って言うのよ。早い話が『貝合わせ』よっ! こういう細かいところまでギャグが効いてるのが、このドラマのいいところ。ちなみにこれまでも何度か誉めてるエイミーのいかにもレズビアンな服装ですが、実は衣装担当が『プリティ・リトル・ライアーズ』と同じ人なんだそうです。納得。第3話のどう見てもノンケが身につけないブーツやブレスレットなど、付け焼き刃では出て来ないレズビアンっぽさなんだもん。

ショーンに関しては、相変わらず空回りしまくっているローレンとの掛け合いもすばらしかったです。そこだけ『アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル』になったかのごときあの展開、好きだわ。ローレンのアホさとかわいらしさも全開で、良い演出でした。

一方カーマの方は、今回はダレ場と言っていいんじゃないかなあ。リアムとのいざこざも凡庸、というか、そのリアムの側の魅力がなかなか見えてこないため、カーマとリアムのぶつかり合いに華がないんだよね。このドラマ、悪役も含めてみんな一癖あって魅力的なのに、どうもリアムだけまだ「典型的で平凡なヤリチン君」ポジションから抜け出し切れていない気がします。ケールの着ぐるみや鉄工アート程度じゃ説得力が薄いので、彼を駆り立てるものは何で、どうやってそれを得ようとする人間なのかをもうちょっと書き込んでほしいところ。

最後に、今回とてもよかったゲストキャラ・ジャズミンについて。彼女は『Faking It』を見ながら「自分のティーンエイジャー時代もこうだった……!』と泣き笑いしているすべてのレズビアンの分身だと思います。視聴者層がよくわかってるなあ、MTV。このままのクオリティでシーズン最後まで駆け抜けて行ってほしいです。

おまけ

『Faking It』による、NOH8キャンペーン(結婚の平等を求め、反差別を訴える非営利キャンペーン)写真。向かって左がカーマ訳のケイティー・スティーブンス、右がエイミー役のリタ・ヴォルク。

真ん中がショーン役のマイケル・ウィレットです。

NOH8キャンペーンをご存知ない方は、一度公式Twitterをごらんになっては。写真を眺めるだけで、セクシュアリティを問わずいかにたくさんのセレブがこのキャンペーンに参加しているかわかると思います。「少数派の味方をするのは当の少数派だけ」という日本人にありがちな思い込みがいかに的外れなものであるか、一発でわかりますよ。