石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『キャンディ(2)』(鈴木有布子、芳文社)感想

キャンディ (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

キャンディ (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

1巻の良さがすべて台無し。

女子高生同士のカップルの卒業後までを描くラブストーリー、第2巻。話の核となる葛藤がぼやけていて、引き延ばしに失敗した感がありあり。邪悪な性的プレデターとしてのレズビアンキャラだの女同士の心中だの、古臭い要素が多すぎるところも残念。

葛藤がボケてます

野々宮から可南への横恋慕が2巻最大の葛藤になるのかと思いきや、なぜか次第にうやむやになり、途中から出てくる新キャラの女性養護教諭が唐突にメインカップルの恋路を邪魔し始めます。とってつけたような展開すぎる上、養護教諭の人物像や願望が不明瞭すぎて、ドラマを転がすほどの葛藤がつくり出せていないと感じました。「野々宮というキャラをうまく動かせなかったので、エロくてダークな新キャラでテコ入れしようとするも、シナリオが弱くて大失敗」てな印象ですな。

しかも養護教諭はレズビアンの性的プレデター

もうね、言及するのも汚らわしいぐらい古臭くてうっぜえええええキャラ造形でしたわ。いや、性暴力(同意無く他人にキスしたり触ったりするのは、ジェンダーやセクシュアリティに関係なくすべて性暴力ですよ念のため)をはたらくレズビアンキャラを描くなとは言いませんよ。フィクションなんだもん、おもしろければ何でもありだよ。殺人レズビアン・テロリストが主人公の漫画だって、あたしゃ大好きだよ。

だがしかし、今さらここまで古臭すぎるレズビアンのセックス・モンスター像をしゃあしゃあと出してくるセンスにはうんざりなのよっ!「ミステリアスで邪悪なエロエロレズビアンが悪巧みを働かせて若い乙女をつけ狙い、誘惑する。しかし最終的には破れ、退場」って、レ=ファニュが書いてから何年経ってるパターンだよ。ステレオタイプすぎて糞オフェンシヴだよ!! ひとつぐらいこのキャラなりの特徴とか魅力とか作れよ! 20年以上前のTVドラマ『悪魔のkiss』の黒田福美の役の方が、同系列キャラでもまだ個性的だっつーのよ!!

このキャラが単に邪悪なだけの存在ではない(という設定である)ということはいちおう後半で明かされるのですが、そこまでの行動が何ひとつ共感できないため、「だから何」という印象しか残りませんでした。そういう意味でもうまく行ってないと思うんです、キャラ造形。

なんだよあの心中ネタ。昭和かよ。

終盤まぎわに出てくる心中ネタが安易すぎ。それに対する周囲の反応の描かれ方もひどすぎ。昭和かよ。トレヴァー・プロジェクトやイット・ゲッツ・ベター(共にLGBTティーンの自殺防止プロジェクト)を必死で頑張ってる人たちにゲラゲラ笑いながら泥をぶっかけるかのごとき時代錯誤性だわ。

おそらくこの心中ネタに絡めて、「なぜこの養護教諭が可南にちょっかいを出したのか」を説明しようとしたのだろうな、とは思います。でも、結局それもうまく説明しきれず台詞(手紙によるモノローグ)に頼っているというていたらく。結局のところ、「安直に出した性的プレデターを、最後までうまく使い切れずに終わりました」というまとめ方にしか見えませんでした。

まとめ

1巻はとてもよかったのに、この2巻は「ネタ切れのあまり昭和の香り漂うネガティブな同性愛描写に走り、ドラマが盛り上がらないまま終わってしまった」という印象しかありません。1巻で終わらせておけば名作と呼ばれただろうに、とかえすがえすも残念です。