石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

マイケル・サムのゲイ・キスを非難した米女性キャスター、自分はTVで男性ストリッパーとキスしていたため大炎上

Chippendales: The Naked Truth

先日ゲイのフットボール選手マイケル・サムがドラフトで指名され、彼氏と喜びのキスを交わす姿がTV放映されました。それを「見たくない」と非難した女性キャスターが実は以前番組内で男性ストリッパーにキスしていたことがわかり、批判を浴びています。

詳細は以下。

Anderson Cooper Tears Apart Hypocrite Anti-Gay Dallas Anchor Offended By Michael Sam Kiss - The Gaily Grind

サム選手とボーイフレンドのキスシーンはこちらです。大手スポーツ局のESPNが放映しました。


The First Gay Athlete Ever Drafted: Michael Sam Reacts To Being Drafted By The Rams! - YouTube

あたしは後から知ったんですが、これ、ESPNが狙って撮ったキスではなかったんだそうですね。従ってこのキスは、米国TV史上初の、「シナリオがないゲイ・キス」だったことになります。

これに噛みついたのが、テキサス州ダラスの女性キャスター、エイミー・クシュナー(Amy Kushnir)。共同司会をつとめる朝の番組『The Broadcast』の中で、こんなことを言ったんです。

子どもがいる人が自分の子にこれを見せたいと思おうと思うまいと選択の余地がないっていうのは……間違ってる。わたしはあれをお祝いの瞬間とは呼ばない。顔を押しつけ合ってるだけじゃないの。わたしは見たくない。ケーキを顔につけてキスしあうところは見たくないのよ。

When parents do not have a choice about whether or not they want their children to see this, it is wrong…I don’t call it a moment of celebration…It’s being pushed in faces. I don’t want to see that. I don’t want to see cake in your face, kissing each other.

さらに、こんな放言まで。

問題なのは、ESPNは、もし彼が妻にキスしていたら全然放送しなかっただろうってこと。

Here’s the thing. ESPN would not have aired any of it had he been kissing his wife.

いやいやいやちょっと待て。異性愛者のNFL選手が妻や彼女にキスする姿はこんなに報道されてるのよ! そこ、完全無視ですか!?

ところで、こんなことをおっしゃるエイミー・クシュナー本人はどんな高潔な方なのかというと。同じ番組の2月の放映分で、半裸のたくましい男性ストリッパーたちとキャッキャとたわむれた後、うち2人の肩に両手を回してキスまでなさっておいででした。詳しくは以下の動画を。(キスの場面は7:43~)


Chippendales Dancers In The Studio - YouTube

自分が男性ストリッパーにキスするのはよくて、ドラフトでNFLチームに選ばれたゲイがパートナーに喜びのキスをするのは気に入らないとは、絵に描いたようなみごとな二重基準ですな。

オープンリー・ゲイのアンカーマン、アンダーソン・クーパーは、CNNの番組内コーナー「The Ridiculist」でこのことを取り上げて痛烈に皮肉っています。


Show host on Michael Sam kiss: I don't want it in my face - YouTube

アンダーソン・クーパーの2:10~あたりの台詞をちょっと訳してみますよ。

いいですか、彼女が意見を表明するのは当然のことです。彼女はわたしたちに、子供たちのことを考えてほしいと思っているのであり、確かに一理あるのです。わたしたちが行動を起こさねば、TVは半裸の男性と無差別キスでいっぱいの、混乱状態のどんちゃん騒ぎになってしまうかもしれません。

Look, she has every right to express her opinion. She just wants us to think about children and she has a point. If we don't take action, TV could become a bacchanalian, free for all replete with half-naked men and indiscriminate kissing.

こう言った直後(2:24)に、マッチョなストリッパーに抱き上げられてキャーキャー浮かれ騒ぎ、彼らの頬にキスをするエイミー・クシュナーの映像を入れてみせるという手際の良さよ。アンダーソン・クーパーは、さらにこう続けます。

彼女がストリッパーたちにキスしていて、しかも相手は知り合いでさえなかったというのは別にいいんですよ。愛し合っているとかどうとかいうふたりの男性とは違うんですから。そっちは不快なんですよね。

It's okay she was kissing strippers and she didn't even really know them. It's not like two guys who were in love, or anything. That's offensive.

さすがはアンダーソン・クーパー!!

さて、マイケル・サム選手のキスに関してあたしが思うところを述べておくと、まず、ゲイでない人があれを見て「不快だ」と思うのは自由だと思うんです。それを口にするのも、基本的には自由。しかし、「思ったことを人前で全部ダダモレで口にして、かつ誰からも批判されない自由」は誰にもありません。ましてや、ダダモレにしたのが誰かの人種や性、身体的特徴、知的能力などを攻撃することばなら、なおさら批判は免れません。そこをはき違えている人が多いと思いました。

あたしがこのキス騒動でもっとも共感したコメントはふたつあって、まず、オープンリー・レズビアンのキャスター、ロビン・ロバーツのこちら。

意味は「彼(マイケル・サム)が何をすると思ってたのよ。彼氏と握手するとでも?」。嬉しいことがあったときパートナーにキスするのなんて当たり前なのに、今さら何を騒いでいるのかという皮肉ですね。

もうひとつは、同じくレズビアンでコメディエンヌのワンダ・サイクスの、ひとひねりしたジョーク。

訳すと、「ESPNがフットボールのマイケル・サムがボーイフレンドの顔にケーキを塗りたくるところを見せたことにはショックを受けたわ。ケーキなしでベッドに行かなきゃいけないお腹を空かせた子供たちがどんなにたくさんいるか、わかってるの?」。

サム選手はとっくの昔にカミングアウトしているのに、今さらキスぐらいで大騒ぎしてどうすんのというジョークですな。ゲイだからキスシーンは見せないはずだと勝手に思い込み、勝手にショックを受けた人たちのあまりのナイーブさを笑ってるんですよ、ワンダは。