石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

育児中のゲイ男性の脳は、父親・母親両方の脳と似た働きをする(イスラエル研究)

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養子縁組や代理母出産を経て子育てしているゲイ男性の脳では、父親と母親両方の脳と似た働きが起こるとする研究結果が発表されました。

詳細は以下。

Gay dads' brains show activity akin to both parents': study | Reuters

この研究はイスラエルのバル=イラン大学の神経心理学者ルース・フェルドマン(Ruth Feldman)氏他によるもの。2014年5月26日に『米国科学アカデミー紀要』(Proceedings of the National Academy of Sciences)で発表されました。

フェルドマン氏によれば、

  • 赤ちゃんの世話を主に担当している女性(20人)
  • 育児に協力的だが、赤ちゃんの世話は妻が主体という異性愛者男性(21人)
  • 夫とともに育児しているゲイ男性(48人)

の3グループを比較したところ、赤ちゃんを見たとき活性化される脳の部位にそれぞれ違いが見受けられたとのこと。まず女性の場合、脳の感情を司る部位、とりわけ扁桃体が通常の5倍活性化したんだそうです。一方、異性愛者男性では、活性化したのは脳の認知を司る部位。つまり、赤ちゃんの泣き声や非言語メッセージを解釈する部分。ゲイ男性の場合、その両方の部位が活性化していたのだそうです。

ちなみにゲイ男性では脳の感情を司る部位と認知を司る部位との間に情報伝達経路が構築されていた一方、異性愛者男性にはそうした現象は見られなかったとのこと。おもしろいことに、ゲイ男性の場合、育児を主に担当する時間が増えれば増えるほどその経路が強化されていたそうです。

「父親の脳は高い可塑性を持っています」とフェルドマンは述べた。「父親がふたりいるとき、彼らの脳は、最適な子育てをするために感情と認知の両方のネットワークを両方採用しているに違いありません」

"Fathers' brains are very plastic," Feldman said. "When there are two fathers, their brains must recruit both networks, the emotional and cognitive, for optimal parenting."

このような現象が起こる理由について、フェルドマン氏はこう述べています

「母親が近くにいると、父親たちの扁桃体は休むことができ、母親たちが気苦労を担当します。母親が近くにいないとき、父親たちの脳はこの機能を身につける必要が出てくるのです」

“When mothers are around, fathers’ amygdala can rest and mothers do the worrying. When mothers are not around, fathers’ brains need to assume this function.”

ということは、これって性的指向とは関係なく、単に「育児を主に母親に担当させている父親は、脳の感情を司る部位を使わずに済んでいる」という話なのかも。だとしたら、その状態を男性全般のデフォルトだと勘違いして、「ゲイ男性に子育ては無理、子供には母親の愛情が必要」などと騒ぐのはナンセンスだということになるかもしれません。もちろんこんなことは実際にゲイカップルに育てられた子の意見を聞けば一発でわかりそうなものですが、偏見に満ちた人たちを説得するには科学的エヴィデンスも必要。こういう研究が進むことで、同性カップルが養子を引き取ることへのハードルがもっと低くなっていくといいと思います。