石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

6歳トランスジェンダー女児のママ、偏見を斬る痛快スピーチ

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6歳のトランスジェンダー女児を持つお母さん、デビー・ジャクソン(Debi Jackson)さんが、トランスジェンダーの子供や家族が直面しがちな偏見をぶった切るすばらしいスピーチをしています。

詳細は以下。

This Mother’s Speech About Her 6-Year-Old Trans Daughter Will Make You Cry / Queerty

スピーチはこちら。


Debi Jackson reading "That's Good Enough" - YouTube

デビーさんはこのスピーチの後半で、トランスジェンダーの子を持つ母として無理解な人たちからしょっちゅう言われることを6つ紹介し、反論を展開しています。それがもう痛快で痛快で。ちょっと訳してみますよ。

1. 「おまえたち一家はリベラル派で、ゲイのアジェンダを推し進めているのだ」
いいえ、わたしは保守的な南バプティスト派で、共和党支持で、アラバマ出身です。
2. 「女の子が欲しかったから子供を女にしたんだろう」
いいえ、ぜひぜひ男の子が欲しいと思ってました。この現代社会で女の子を育てるだなんて、死ぬほど怖いので。女の子をちゃんと扱える男の子を育てることの方が、悪ガキとばかりデートしたがる女の子を育てることより、よっぽど責任が持てたと思っています。
3. 「子供には自分が何になりたいかとか、本当の自分は何かなんてわからない。うちの子は犬になりたいと言っているが、そうさせるべきかね?」
それはあなた次第ですけど、わたしならそうはしないでしょうね。ごっこ遊びで何かになりたがることと、本当の自分は何なのか、あくまで(insistently)、首尾一貫して(consistently)、持続的に(persistently)言い続けることとは別物です。トランスジェンダーの子供を見分ける指標は3つあり、わたしの娘はそのすべてを示していました。
4. 「そんな小さい子にセックスについて学ばせるのは早すぎる」
そうですね、だからトランスジェンダーであることがセックスと無関係なのはいいことですね! 性自認とは本人が自分の内面をどう知覚するかということであり、誰に魅力を感じるかということとはまったく違います。
5. 「トランスジェンダーの人たちは変態だから、正常な人と同じトイレを使わせるべきではない」
あなたがトイレに何をしに行くのかは知りませんが、うちの娘が何をしに行くのかはわかっています……それは、周りをきょろきょろ見ることではありません。個室に入り、鍵をかけ、誰にも見られない状態でおしっこすることです。
6. 「神はトランスジェンダーの人々を憎んでいる。彼らは罪人であり、地獄に堕ちる」
わたしの神様は互いに愛し合えと教えましたよ。(引用者中略)神様は外見ではなく、心を見るのです。わたしの娘の心は女の子で、本人はそのことがわかっています。神様もわかっています。わたしにはそれで十分です。

上記のうち特に3、4、5は、日本でもしたり顔で言う人が多いと思うんですよ。これ暗記しておいて、反論に使おうっと。

デビーさんの娘さん、AJさんは出生児には「男」とされたものの、3歳のときから女の子の服を着たがり、自分の性器について「邪魔」「なくなってほしい」と言っていたのだそうです。医療機関にも相談し、女児用の服を着て常に女の子として生活するようになってからも、困難は続きました。特に、学校で。

「子供たちはすばらしかったし、先生方も最高だったんです。でも、子供たちが家に帰って両親に話してからは、そこまですばらしくはなくなりました」

“The kids were great and the teachers were awesome. But then the kids went home and told their parents and they weren’t so great after that.”

そう、知識のない偏見持ちの親たちが、わざわざ子供に偏見をすり込むのよ。それこそ上記1~6みたいなことを言い立てて。おかげでジャクソン一家は1年間、娘さんの髪が伸びて女の子っぽくなるまで「隠れて」いなければならず、「多くの友達や、何人かの親戚と疎遠になった」そうです。

このスピーチはカンザスシティのユニティ・テンプルでおこなわれたもので、2014年7月9日にYouTubeにアップロードされ、今日(7月17日)の時点で再生回数は既に6万5千回を越えています。こういう声が伝わることで、アホな偏見が少しでもなくなってほしいです。

あともうひとつ忘れてはならないのは、これだけの偏見にさらされていても、AJさんは実はまだラッキーなケースだということ。これはジャネット・モックが指摘した、「お金も情報源もあるアッパーミドル白人家庭の子が幼くしてトランスジェンダーだとわかり、周囲の支援でこんなに幸せに」という「最良のケースのシナリオ」なんです。単純に美談として消費して、「あらあら大変ね、いい家族がいてよかったわねえ」だけで済ませてはいけないと思います。もっと能動的に偏見をぶっ壊し、トランス・キッズが生きやすい仕組みを作っていくのが、社会の(つまりアナタやワタシの)責任だとあたしゃ思いますよ。