石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

英国サッカー協会、トランス選手に門戸を開く

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2014年11月25日、英国サッカー協会が、トランスジェンダーの選手が性自認通りのジェンダーでプレイできるようにすると発表しました。サッカーの運営組織がこのような方針を採用したのは、世界でも初めてのことだそうです。

詳細は以下。

FA: Trans people can now play pro football | Gay Star News

同協会はトランス選手からの認可申請に応じて内密で話合いをおこない、必要なエビデンスの細部について関係者と検討するとのこと。

「トランスセクシュアルズ・イン・スポート」(Transsexuals in Sport)という団体の創設者、デリア・ジョンストン(Delia Johnston)さんは、今回の発表を「画期的」と評価し、「ベンチマークとして、10点満点で15点つける」と述べているそうです。また、英国サッカー協会のFunke Awoderu平等部長は以下のように話しています。

サッカーはほんとうにみんなのものなのだという協会のスローガンに恥じないことであり、我が国の試合に参加したいと思っていたトランスの人たちのためにこの規定が作られたことを嬉しく思っています。

‘It is something true to The FA’s mantra that football really is for everyone and I’m pleased this provision has been made to trans people wanting to get involved in our national game.’

「サッカーはみんなのもの」というのは世界中で聞かれるお題目ですが、それは理想であって、現実にはなかなかそうなってはいませんよね。たとえば人種差別。日本選手が欧州で差別・中傷される一方、当の日本では日本人サポーターがせっせと外国人差別に励んでいたりして、全っ然「みんなのもの」じゃない。これを放置しておきたいのは差別する側の人、もしくは、差別を放置しておいた方がトクな人だけでしょう。英国サッカー協会の英断に、あたしは拍手を贈ります。

最後に、「トランスジェンダーの参加を認めたら男子がどんどん女子の試合に入り込む」のような非現実的な妄想を抱いていらっしゃる方々へ。ジェンダーを変えて生活するというのは、あなたが漠然と想像しているほど簡単なことではないです。実際に18ヶ月かけて実験してみた人の手記が出ていますから、まずそれをお読みになっては。

Self-Made Man: One Woman's Year Disguised as a Man

Self-Made Man: One Woman's Year Disguised as a Man

このノラ・ヴィンセントさんの性自認は女性(性的指向はレズビアン)。この本を書くため特殊メイクと男装で男性になりすまして1年以上生活していたところ、メンタル面に深刻なダメージが残り、うつ状態の治療のため精神科の閉鎖病棟にまで入るはめに陥ったそうです。ヴィンセントさんは男装での取材中、女子禁制の修道院などで生活していましたが、誰にも女性だとばれてはいないし、ましてや「トランスジェンダー」としての差別も一切受けていません。それでもこの始末。この本の次に彼女が出した著作のタイトルが意味深ですよー。『Voluntary Madness』(訳すと『わざわざ自発的に招いた狂気』)っていうの。『Self Made Man』の執筆で陥ったうつ状態からの闘病生活を綴った本なんです。

たかだか何年かの選手生活のために、そうまでして「自発的に招いた狂気」を背負い込みたいシスジェンダーの人がそうそういるとは思えません。ましてや英国サッカー協会の場合、認可を得るにはエビデンスが必要なわけで、ということは医師の診断や性別移行の進展状態などについても証明しないといけないわけでしょ? そのためだけにホルモン治療や手術を受け(治療後に自殺しちゃうリスクがあるため、シスジェンダーの人はまず事前のスクリーニングでふるい落とされると思うんですが)、さらに「トランスジェンダーの」選手としての差別に対峙するだなんて、圧倒的にデメリットの方が多いわよ! ジェンダー・アイデンティティーってもんの重さをなめんなよ。

というわけで英国サッカー協会には、阿呆な外野の声は軽やかにスルーして、サッカーを真に「みんなのもの」にしていただきたいと思います。これが範となって、スポーツ界の公平化がもっと進むといいなあ。