石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「変わる必要があるのはうちの家庭ではなく……」レズビアン家庭の16歳息子が力強くスピーチ(動画)

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米国のNPO「Freedom to Marry」のイベントで、テキサス州で2人のママと暮らす16歳少年がみごとなスピーチを披露しました。率直な物言いながらもちゃんとユーモアも皮肉もあって、結論も明快。しっかりした子だなー。

詳細は以下。

WATCH: Teen With Two Moms Tells Texas It's Time to Change | Advocate.com

この男の子、メイスン・マリオット=ヴォス(Mason Marriott-Voss)くんのお母さんたちは、女性同士のカップルです。メイスンくんには妹と弟がいて、一家はテキサス州オースティンに住んでいます。スピーチによれば、妹さんは成績優秀で、『ハンガー・ゲーム』や『ゴシップ・ガール』、それにファッションが大好きな中学生。弟くんはクリスマスに雪が降るようにという願掛けのため、今月いっぱいヨーダの耳付きサンタ帽を毎日かぶると宣言しているお茶目さん。彼らのママたちはというと、「目下ぼくらの期末試験に協力するのに忙しく、社会をむしばんでいるヒマはありません」とのこと。アンチゲイな人たちが言い張る、「同性愛は社会をむしばむ」とかなんとかいう与太話への皮肉ね。

テキサス州では2014年2月、下級裁判所が州による同性婚禁止を違憲と判断しています。しかし州側の控訴によりこの判決は保留とされており、同州の同性カップルは今のところ結婚することができません。次の裁判は2015年1月。自分たちのような「基本的にとてもふつう(ordinary)の」家族たちが公的に家族扱いされないのは不当であり、州は同性婚を認めるべきだというのがメイスンくんの主張です。スピーチは、次のようにしめくくられています。

「今日ぼくの話の中で皆さんに持ち帰っていただきたいと思ういちばん大事なことは、変わる必要があるのはうちの家庭ではなく、テキサスの方だということです」

"The most important thing I want you to take away from me today, is that it's not our families that need to change, it's Texas."

うんうん。これはほんとにそう。

スピーチ動画はこちら。聴き取りやすいし、笑いの取り方もいい感じ。スピーチ文化の彼我の差を感じるわー。

さてこのスピーチ、あたしには共感できる部分とそうじゃない部分があります。マリオット=ヴォス家のような同性カップル家庭を公的に「家族」と認め尊重すべき、という点にはおおいに共感。同性婚を認めたって社会やら現存の(異性同士の)結婚制度やらが脅かされたりしない、という点にもとっても共感。しかし、「基本的にとてもふつう(ordinary)の」家庭であることを強調して、だから結婚を認めるべきとする論調にはやや疑問を感じます。だって、異性同士の場合、連続殺人犯だろうと幼児虐待者だろうと自由に結婚できて、法的に「家族」と認められるのよ? 同性同士の時だけ「『ふつう』であること」を交渉カードにしなきゃいけないのは変だよ。

「あなたたちと同じ『ふつう』の人なんだから同じ扱いをしろ」っちゅー論法はさ、下手すりゃ「ふつうじゃない人」「人と違っている人」は切り捨ててもいいっていう既存の価値観に迎合することにもなりかねないと思うのよ。それはちょっと危険なんじゃないかと。そんなわけで、テキサス州は変わるべきという結論には賛成できるものの、そこに至るロジックはちょっとあたしと考え方が違うなあと思った次第でした。こういう言い方の方が反対派を説得しやすい、とか、そういう戦略があってのことかもしれませんけどね。