石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

英映画『パレードへようこそ』米国版DVDジャケットからゲイ要素が削除される。しかもレイティングは「R」。

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英国のレズビアン・ゲイ映画『パレードへようこそ』(原題:"Pride")が、米国では本国より厳しい「R」レイティングにされた上、画像加工まで使ってDVDジャケットの同性愛要素を消されてしまったそうです。

詳細は以下。

US hides gayness of Pride movie | Gay Star News

この作品の舞台は1984年の英国。ストライキ中の炭坑労働者の家族を助けるためゲイやレズビアンの活動家たちが立ち上がるという、心温まるコメディードラマです。

トレイラーはこちら。

見ての通りセックスも暴力もないこの作品ですが、なぜかアメリカ映画協会(MPAA)は、米国でのレイティングを本国の「15」(15歳未満には非推奨)よりも厳しい「R」(Restricted、17歳以下は保護者同伴が必要)にしてしまったんだそうです。さらに最悪なのが、配給元(劇場はCBSフィルムズ、DVDはソニー・ピクチャーズ・ホーム・エンタテインメント)によるDVDジャケットの改竄。くわしくは以下を。

消されてしまった横断幕に書かれていたのは、「レズビアンとゲイは炭鉱労働者を支援する("LESBIANS & GAYS SUPPORT THE MINERS")」という言葉です。それをわざわざ消してしまうというのは、ほかならぬこの映画のテーマを踏みにじることなんじゃないの? そうまでしてホモフォビックな観客に媚びを売りたいのかと。まるで、「とりあえず同性婚に反対しとけば保守派の票が集まるから」とゲイバッシングに精を出してた、ちょっと前までの共和党議員みたいね。

【2015年1月7日追記】PinkNewsが、DVDジャケット裏面の文章の改竄についてくわしく指摘しています。それによると、オリジナル版では「ロンドンに拠点を置くゲイとレズビアンの活動家グループ」("London-based group of gay and lesbian activists" )とされていたところが、米国版だと「ロンドンに拠点を置く活動家グループ」("a group of London-based activists" )にされてしまっているとのこと。【追記ここまで】

個人的にこのニュースを見て反射的に連想したのが、推理作家パトリシア・コーンウェルが、「検屍官ケイ・スカーペッタ」シリーズのレズビアンキャラについてインタビューで答えたときの、以下のことばでした。

Q「レズビアンの登場人物ルーシーを創ったとき、読者を失ったとおっしゃっていましたね。同性愛がより受け入れられるようになって、その読者たちは戻ってきたのでしょうか」

A「確かに20年前、もうわたしの本は2度と読まないと言っている人たちがいるという噂を聞きました。でも逆に言えば、これは、それまでファンでなかった人たちが新しいファンになってくれるかもしれないということです。だからわたしは、誰かが怒るかもしれないという理由で書き手が逃げ腰になるのは大きなまちがいだと思っています。

Q: You’ve said you lost readers when you created Lucy, a lesbian character. Have you gained them back as homosexuality has become more accepted?

A: Twenty years ago, I did hear rumours of people who said they were never going to read my books again. But the other side of that is, you may get new people who weren’t your fans before. And that’s why I feel it’s a big mistake for writers to shy away if something might offend people.

ルーシーの性的指向が明かされた『死体農場』は1994年刊行。エレン・デジェネレスのカミングアウトより、さらに3年も前ですから、同性愛に対する風当たりは今の比ではなかったでしょう。それでもコーンウェルは逃げず、同シリーズはその後も人気を保ち続けています。かたやアメリカ映画協会やCBSフィルムズときたら、2014年になってさえこんなぶざまな「逃げ腰」をさらしているわけで、恥を知るべき。ていうか、こんなことしてると新規のファンを開拓できないどころか、LGBT差別をよく思わないお客さんにも見放されると思うんだけど、その覚悟はあるのかしらね。映画界がこのざまでは、冗談抜きで、"Orange Is the New Black"みたいなNetFlix製作のドラマに流れちゃうよ、みんな。