石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

米衣服メーカー、ホロコーストのゲイ囚人服風デザインで批判の的に

New England Holocaust Memorial, Boston
New England Holocaust Memorial, Boston / yeowatzup

米国のアパレルメーカー「アーバン・アウトフィッターズ」(Urban Outfitters)が、ナチスの強制収容所でゲイが着せられていた囚人服を想起させるデザインのタペストリーを販売し、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)から抗議されています。

詳細は以下。

Urban Outfitters slammed for tapestry 'eerily' similar to gay uniform in Nazi death camps | Gay Star News

問題のタペストリーのデザインは 白と灰色の縞模様の生地にピンクの三角形をつけたもの。以下の写真左側が、そのタペストリーです。右側が、ホロコーストでゲイが着せられていた囚人服。

ナチスは同性愛を「根絶すべき病気」と考え、同性愛者を逮捕・投獄・虐殺していました。Gay Star Newsによれば、1933年から1945年の間にナチスによって逮捕されたゲイ男性は推定5万人から10万人。強制収容所でのゲイたちの死亡率は50%を超えており、非ユダヤ人の中ではもっとも高かったそうです。

「意図したものであろうとなかろうと、この灰色と白の縞模様とピンクの三角形の組み合わせは非常に不快なものであり、大衆文化の本流に組み込まれるべきではありません」と、名誉毀損防止同盟の国内責任者で、ホロコーストの生き残りであるエイブラハム・フォックスマン氏は声明文で述べた。

「わたしたちはアーバン・アウトフィッターズに対し、ホロコーストの犠牲者に強いられた服を不気味なほどに想起させるこの製品を、店舗やインターネットから取り除くよう強く要請します」

'Whether intentional or not, this gray and white stripped pattern and pink triangle combination is deeply offensive and should not be mainstreamed into popular culture,' said Abraham Foxman, ADL national director and Holocaust survivor, in a statement.

'We urge Urban Outfitters to immediately remove the product eerily reminiscent of clothing forced upon the victims of the Holocaust from their stores and online.'

こういうのって、殺す(殺した)側にとっては「過去のこと」「今差別する意図はないんだからいいじゃない」程度の話に見えるのかも知れませんが、殺される側にとっては70年前の血まみれの亡霊が目の前にぬうっと立ちはだかったようなものですからね。

ただし、ゲイの側が全員このデザインをいついかなる場合でも絶対に許されないと受け止めているわけでもないようで、PinkNewsのコメント欄では、こんな意見に賛成票が集まっていました。

この製品が、1種の政治的ステートメントとして、そのステートメントが何であるのかわかる説明つきで販売され、利益がゲイ・ムーブメントのために使われるのなら、すばらしい。テリー・ヒギンズ(訳注:1980年代に亡くなり、エイズ・チャリティ団体Terrence Higgins Trust設立のきっかけとなった人)が思い浮かぶよ。

苦しんで亡くなった兄弟や姉妹たちのことを心に留め、敬意を表するためであれば、自分はよろこんでこのような衣服を身につけるだろう。

もしこれが何か流行りのものとして売られていて、これが何を表しているのかわからない子供が買っているのなら問題だと思う。

If this is sold as a political statement with information as to what that statement is, and profits went to a gay cause, Terry Higgins comes to mind, fine .

I would be happy to wear such a garment in remembering and honouring our brothers and sisters who suffered and died.

If this is being sold as something trendy and being bought by kid's who have no idea what it represents, I have a problem.

なるほど、と思いました。ピンク・トライアングルは、ゲイへの弾圧や迫害と、それを乗り越えてきたゲイたちの誇りを表すという意味で、現代ではゲイ・プライドのシンボルとして使われています。そこを強調して売るのなら、そして売上げがゲイのためにもなるのなら、確かにありなのでは。ただ現実的には、これって、「何か流行りのものとして売られていて、これが何を表しているのかわからない子供が買っている」可能性の方が高くない? アーバン・アウトフィッターズって、LGBTアンフレンドリーな会社として以前から批判されてきたところですから。くわしくはこのへんをどうぞ。

この会社は同性婚を支持するTシャツを売り出したかと思ったら1週間で引っ込め、その一方でトランスジェンダーの人々を指す侮蔑語をプリントしたTシャツを販売して、トランス・コミュニティの怒りを買ったりしています。性的少数者の従業員への待遇なども悪く、 ヒューマン・ライツ・キャンペーンのバイヤーズガイドでは100点満点で15点。また、同社の創設者で2012年までCEOを務めたリチャード・ペインは、同性愛を獣姦と同列とみなすアンチゲイ政治家に献金していました。これらの事実をふまえると、同社が今さらゲイ・プライドの象徴としてピンク・トライアングルを扱っているとは、あたしには思いがたいです。「タブーに挑戦する俺カッケー」気取りか、いいとこ「何も考えずにデザインしました、過去のことなんか知りません」路線なんじゃないかとつい疑ってしまいます。とりあえず、日本でこのタペストリーが売られていても、あたしは買いませんね。